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2025/12/19 09:55

老後資産を守る企業年金戦略!DB・DCの基礎と2026年改正の影響【後編】

前編では、企業年金制度の基本構造として「確定給付企業年金(DB)」と「確定拠出年金(DC)」の違い、そして2026年4月から予定されている企業型DCの改正について解説しました。

 

<関連記事>老後資産を守る企業年金戦略!DB・DCの基礎と2026年改正の影響【前編】

 

後編では、より実践的なテーマとして、拠出戦略やDBとDCの併用・受け取り方による税制の違い・今後の方向性を中心に、老後資金を賢く形成・受け取るためのポイントを解説します。

 

DCの運用戦略

 

企業型DCでは、投資運用の成果が将来の受取額を大きく左右します。
したがって、①拠出額の設計②運用商品の選択③受け取り方。
この3ステップを意識して戦略を立てましょう。

 

拠出額の設計

 

2026年の改正でマッチング拠出の上限額が拡大するため、DCで資産形成できる幅が広がります。ですが、拠出額の増幅を考える際は3点を意識しましょう。

  • 積立を継続しても家計に無理がないか。
  • 長期・分散投資を基本とする。
  • 掛金全額所得控除の節税効果を理解する。
    たとえば、年収500万円・所得税率10%・住民税率10%の人が月2万円を拠出すると、年間約4.8万円の節税効果があります。
    運用益も非課税のため、長期ではさらに大きな差となります。
    掛金額はライフイベントに合わせて増減可能ですので、子育て期や住宅購入期は控えめに、余裕ができた時期に増額するなど柔軟に調整しましょう。
    まずは生活費と緊急資金を確保し、無理のない金額から始めることが大切です。

 

運用商品の選び方

 

DCでは勤務先が指定する運営管理機関が用意したメニューの中から、自分で運用商品を選びます。

運用商品の主なタイプ

定期預金型:元本確保で安全。低リスク・低リターンでリスクを取りたくない人向け。

債券型:値動きが比較的安定。中程度のリスクリターンで安定重視派。

株式型:成長性が高い。高リスク・高リターンで長期運用できる人向け。

バランス型:自動で分散投資される。中程度のリスクリターンで、初心者・忙しい人向け。

老後資金の基本は「長期・積立・分散」のため、手数料(信託報酬)が低いインデックス型を中心にしましょう。ターゲットイヤー型やバランス型ファンドも投資初心者におすすめです。
定期的に資産配分を見直す習慣を持てば、安定した資産形成が可能です。

 

受け取り方

 

受け取りは2パターンあります。

一時金方式:退職時などにまとめて受け取る方法。退職所得控除が利用できますが、退職金と同じ年に受け取ると課税対象が増える場合があります。
年金方式:毎年・半年ごとに分割して受け取る方法。公的年金等控除が使えますが、毎年の年金は雑所得扱いとなります。

会社によっては一時金と年金の併用や受取時期の調整が可能です。どちらが有利かは、退職金の有無や他の所得とのバランスで異なるため、事前シミュレーションをすると安心です。

 

DBとDCの併用 

 

最近では、DBとDCを併用する「ハイブリッド型」を導入する企業が増えています。
DBが基礎年金として安定的な給付を確保し、DCが上乗せ年金として資産の成長を担う仕組みで、
この2つを組み合わせることで、安定性と成長性をバランスよく両立できます。
自分の勤務先がどの制度を採用し、拠出可能額はいくらか確認しておきましょう。

 

転職・退職時には

 

転職や退職の際は、企業型DCの資産を新しい勤務先の制度やiDeCoへ移すことができます。
移換手続きを行えば、転職後も年金資産を継続運用できます。
ただし確定給付年金(DB)は移換できない場合もあるため、退職前に制度内容を確認しておきましょう。

 

iDeCoとの併用

 

企業年金に加え、個人で加入できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用すると、老後資金形成の自由度がさらに広がります。

iDeCoのメリット

  • 掛金全額が所得控除。(年収500万円で年間約5〜6万円の節税効果)
  • 運用益が非課税。
  • 受取時に退職所得控除または公的年金等控除が適用可能。

iDeCoも退職金やDCと同じ年に受け取ると課税額が増えることがあるため、受取時期や形式に注意しましょう。

 

今後の企業年金制度の方向性

 

企業が給付を保証するDB型が主流でしたが、現在はDCやiDeCoといった「自己運用型」への移行が進んでいます。これは「自分の年金は自分で育てる」時代の到来といえるでしょう。

だからこそ自分の会社の制度内容を理解し、どのくらい拠出できるのか、どんな運用ができるのかを確認することが個人として求められていきます。

知らなかった・難しい・時間がないなどと後回しにせず、今からできることを着実に行い将来に備えていきましょう。

 

まとめ

 

老後資金は、退職金・DB・DC・iDeCoといった複数の制度を組み合わせてこそ、より強固になります。
2026年の改正は、その組み合わせをより柔軟にする大きな節目です。
制度改正を味方につけ税制優遇を活かしながら、育てる年金を自分の手で築くことが、これからの時代のスタンダードです。

 


 

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