ビッグマック指数が示す2025年の物価動向について【後編】

各国の経済力を測る指数として、誰もが知るマクドナルドのビッグマックの価格から導かれるのが「ビッグマック指数」です。
前編では、ビッグマック指数に関する基礎知識や、ここ数年における日本のビッグマック指数が右肩下がりになっていることを解説しました。
後編となる今回は、ビッグマック指数と経済の関係性に着目して深掘りを進めていきます。
為替や各国の経済事情を理解した上で資産形成をしたいと考えている方は、ビッグマック指数の考え方を理解しておくことで、より効果的な投資ができるかもしれませんので、ぜひ読み進めてみてください。
実質的な経済指標としてのビッグマック指数
ビッグマック指数が持つ利点としては、異なる国の購買力平価を「ビッグマック」という共通の観点で直感的に捉えられることが挙げられます。
本来、経済に関する指標はどれも複雑で、知識の浅い人が指標を見ても意味が分からず、言葉の定義を理解することから始める必要があります。
その点ビッグマック指数は、「日本でこれくらいの価格で売られているビッグマックが、他の国だと日本円でいくらで売られているか」を直感的に把握できますので、どんな人でも国家間の通貨の価値や経済事情の大枠を理解することが可能です。
異なる国同士の通貨の本質的な価値を比較することは、資産形成をする上では非常に重要となってきます。単純に為替レートだけで通貨の価値を判断してしまうと、裏に隠れている長期的な経済動向を見誤ってしまうリスクが高まります。
その点で言えば、ビッグマック指数は長期的な為替レートの適正さを推察するのに役立つはずです。
投資判断にビッグマック指数を活用する具体例についても触れておきましょう。
そもそもビッグマック指数は、「自分が投資を考えている国のビッグマックの価格÷アメリカのビッグマックの価格」で求めることができます。
この計算による指数が仮に0.8だとした時、米ドルの方が国際的な購買力は上回っていると推測できます。従って、この局面では自分が投資を考えている国の通貨に投資をするのではなく、米ドルに投資した方が長期的に見た時にリターンが期待しやすいと言えます。
もちろん、前編で解説した通り、そもそもビッグマックの価格はそれぞれの国における食文化や消費習慣にも影響されるため、あくまでも参考数値にすぎません。
とは言え、先の見通しが立ちづらい昨今の投資市場において、誰でも簡単に計算できるビッグマック指数は、長期的な資産形成を考える上で重要な経済指標となるでしょう。
ビッグマックと経済の関係
ビッグマックはマクドナルドが世界100カ国以上で販売をしています。多少の誤差はあれど、マクドナルドは全ての国で同品質でビッグマックを作っているため、価格に反映される材料費は一定となります。
そこに加えて、その国の為替や店舗運営のためのコスト、人件費などが加味され、各国のマクドナルドの価格が決まってきます。
マクドナルドは世界を代表する営利企業であり、創業から50年以上が経過する今も成長をし続けています。そのため、ビッグマックの価格で経済の動向を推察することには、一定の信頼性があると捉えることができるでしょう。
ただし、ビッグマック指数はあくまでも「現在設定されているビッグマックの価格から計算される指標」であることには注意が必要です。
言い換えると、ビッグマック指数は景気の動きに遅れて反応する「遅行指数」と捉えられるということです。
そのため、ビッグマック指数がマーケットに大きな影響をもたらすことはほとんどないと考えておいた方が良いと考えられます。
2025年のビッグマック指数の最新レポート
日本は現在「割安な国」として、数多くのインバウンド観光客が来日する状況になっています。物価も賃金も上昇傾向にあるにも関わらず、それでも世界と比べた時の購買力はまだまだ弱いということでしょうか?
執筆時点において、2025年のビッグマック指数は公表されていませんが、2024年12月現在(以下:現在と記載)における日本のビッグマック指数を算出してみましょう。
まず、現在における日本のビッグマックの価格は480円です。続いて、アメリカのビッグマックの価格を見てみると、5.99米ドルとなります。
最後に現在のドル円相場は153.86円となりますので、日本のビッグマック指数は以下のように算出できます。
480(円)÷5.99(米ドル)÷153.86≒0.521→(0.521-1)×100=▲47.9 |
2024年7月発表時の日本のビッグマック指数は▲43.9だったので、それよりも悪化していることが分かります。
投資判断をビッグマック指数だけで語るのであれば、日本円の価値は今後も明るくなく、海外の通貨で資産形成をした方が良いと推測できるでしょう。