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2025/01/07 19:07

ビッグマック指数が示す2025年の物価動向について【前編】

近年では耳にしない日がない「物価高」。生活必需品から食品、家電製品まであらゆるものが値上げされているのは、みなさんもご存じのことでしょう。

日本における商品やサービスが軒並み物価高になっているのは言うまでもありませんが、世界の物価事情はどうなっているのか気になる人も多いのではないでしょうか?

世界の物価を統一の指標で示すには、世界で共通の商品の売価を比較すれば良いわけですが、それに適しているとされているのが、ビッグマックです。

この記事では、ビッグマックの価格を見て物価や為替の水準を推計する「ビッグマック指数」について、前後編に分けて解説します。


ビッグマック指数とは?2025年の物価動向
 

マクドナルドが販売する定番商品の一つであるビッグマック。このビッグマックは、世界各国でほぼ同一の原材料で使われていることもあり、各国の物価の比較にふさわしいという考え方があります。

この考え方こそ「ビッグマック指数」であり、英国の経済誌「エコノミスト」が考案し、毎年同誌で発表されています。

もちろん、現実では各国のビッグマックの量や内容物、市場環境など複雑な要因が混ざり合っていることもあり、現在はあくまでも世界の物価や為替を推計するための参考指標程度に活用されています。

ビッグマック指数の活用例として、購買力平価を求めることが挙げられます。

購買力平価とは、長期的に見て2カ国間の財やサービスの価格が均衡する水準に収束するという理論です。

例えばビッグマックが日本で350円、アメリカで5.0ドルで販売されている時、導かれるドル円の購買力平価は350÷5.0=70となり、1ドル=70円として捉えることができます。

この時、もし為替相場が1ドル=150円であれば、ビッグマック指数による計算では大きく円安に触れているという見方になります。


2025年におけるビッグマック指数の推移
 

先ほどビッグマック指数は、毎年英国の「エコノミスト」という経済誌で発表されることを解説しました。ビッグマック指数の発表は、基本的にランキング形式で行われ、上位であればあるほど国として豊かであるという見方をすることができます。

たとえば、2024年7月に発表されたビッグマック指数は、以下のようになっています。

順位 国・地域 ビッグマック指数 価格(円)

1

スイス

41.76

1,214

2

ウルグアイ

24.29

1,064

3

ノルウェー

18.94

1,018

4

アルゼンチン

15.03

985

5

ユーロ圏

6.50

912

6

イギリス

3.61

887

7

アメリカ

0.00

856

8

デンマーク

-0.61

851

9

コスタリカ

-1.15

846

10

スウェーデン

-1.61

842

44

日本

-49.93

480

50

南アフリカ

-49.86

429

51

インド

-51.72

413

52

エジプト

-56.61

372

53

インドネシア

-56.77

370

54

台湾

-59.90

343


このように、日本のビッグマック指数は対象となる世界54カ国の中でも44位と下位に属していることが分かります。

ランキング下位5カ国については先進国が目立つことを考えると、世界から見た日本の経済力はそこまで高いものではないということが言えます。

また、日本のビッグマック指数の推移について2010年以降の順位をまとめると以下の通りです。

・2010年7月:14位
・2015年7月:28位
・2020年7月:25位
・2021年7月:30位
・2022年7月:41位
・2023年7月:44位
・2024年7月:44位

このように、日本のビッグマック指数の順位はこの10年ばかりで下がり続けていることが分かります。

つまり、日本の購買力は世界の国々と比べて、徐々に下がっているという可能性が考えられるのです。


ビッグマック指数が示す日本経済への影響
 

日本の物価水準は近年でも上昇傾向にあります。それはもちろん、ビッグマックにも当てはまります。

2024年1月時点におけるビッグマックの価格は480円ですが、その5年前の2019年には390円、その約10年前の2008年には290円でした。つまり、15年前から約2.7倍も価格が高くなっているということです。

経済学の観点から物価の上昇(インフレ)をとらまえると、良いインフレと悪いインフレの2種類に分けられます。

良いインフレとは、景気が上向きになることで物価が上昇することを言い、ディマンドプル・インフレと呼びます。この場合は消費者も賃金が高まっているため、日本経済には良い影響をもたらすでしょう。

一方、現在の日本が陥っているのは悪いインフレであり、景気が低迷している中で、円安や原材料高が原因で物価が上昇している状況です。

景気が回復しないままビッグマック指数の低迷が続けば、日本円の購買力がこれからも下がり続けるかもしれません。

 


 

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