なぜ中古マンションが値上がりしているのか?価格高騰の背景と今後の見通し(前編)

近年、中古マンションの価格が大きく上昇しており、多くの人が「なぜこんなに高くなっているのか?」と疑問を抱いています。
特に東京23区では不動産市場の高騰が続いており、新築マンションよりも中古マンションに注目が集まるケースが増加傾向です。
記事の前編では、中古マンション価格が高騰している背景を多面的に詳しく解説します。
人口流入による需要増加と新築マンション供給の不足
東京一極集中による住宅需要の高まり
東京都を中心とした首都圏では、都心部への人口流入が依然として続いています。
総務省の2024年人口移動報告によると、東京都の転入超過(転入数が転出数を上回る人数)は7万9,285人で、前年比1万1,000人増となりました。これは、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年(8万2,982人)の水準にほぼ戻っています。
コロナ禍により一時的に「郊外移住」の流れが見られましたが、リモートワークが落ち着き、都心への通勤需要が再び高まるにつれて、利便性の高いエリアへの住宅需要が再燃しています。
また少子高齢化が進む一方で、進学やビジネスチャンスを求める20〜30代の都心回帰が顕著なことや、共働き世帯の増加により、職場に近いエリアでの住宅需要も伸びています。
このように人口流入の継続と世帯数の増加が、都心のマンションをはじめとした住宅需要を押し上げる要因となっています。
新築マンションの供給が追いつかない理由
一方で、新築マンションの供給は需要に追いついておらず、市場に十分な数の住宅が出回っていません。これには以下の要因が関係しています。
建築コストの上昇
- 資材価格の高騰(鉄筋・コンクリート・木材など)
- 人件費の上昇(職人不足・労働環境改善によるコスト増)
- 燃料費や物流コストの増加
土地の確保が難しい
- 都市部では開発可能な土地が不足
- 再開発には時間とコストがかかる
- 地価の高騰によりデベロッパーの開発コストが増加
マンション開発のハードルが高い
- 建築規制の強化(耐震基準・環境基準の厳格化)
- 大手デベロッパーの慎重な開発姿勢(採算が取れない案件を避ける傾向)
このように新築マンションの供給が抑制されることで、価格の高い新築よりも比較的購入しやすい中古マンションへの需要が高まるという構図になっています。
中古マンション価格高騰の背景
中古マンションの価格高騰の背景には、新築マンションの供給不足以外にも、以下のような要因があります。
低金利政策による住宅ローンの借りやすさ
日本銀行の低金利政策により、住宅ローンの金利も低く抑えられる今のうちに、住宅を購入しようと考える人が増加しました。特に固定金利での借入を希望する人が増え、中古マンション市場が活性化しています。
投資用マンションの需要増加
富裕層や海外投資家(特にアジアの富裕層や欧米の投資ファンド)の間で、東京の不動産は世界的に見ても割安とされ、将来的な資産価値の上昇を見越した投資先として注目されています。
中でも、一等地のタワーマンションは、都市インフラの整備や防災対策・政治的安定・治安の良さが評価され、国内外の投資家に支持されています。加えて、賃貸需要が堅調で、安定した収益が見込めることも魅力の一つです。
コロナ禍による住宅環境の見直し
リモートワークの普及により、「広めの間取り」「駅近」「職場へのアクセスの良さ」といった条件を重視する人が増えました。その結果、利便性の高い中古マンションへのニーズが高まり、価格上昇につながっています。
また20〜30代の間でも賃貸よりもローンを組んで資産形成を考え、マンションを購入する動きが増加しています。
中古マンションの成約件数が減少していない理由
価格が高騰すると「買い控え」が起きそうなものですが、中古マンションの成約件数は大きく減少していません。これはなぜでしょうか?
価格上昇を見越した「駆け込み購入」
「今後さらに価格が上がるかもしれない」「金利が上がる前に買っておきたい」と考える人が多く、結果的に取引が活発に行われています。
手の届く価格帯
新築マンションは抽選販売や高額な価格設定のため、購入しにくい状況が続いています。一方、中古マンションは比較的すぐに入居できるため、実需層の需要が継続しています。
住宅ローン控除や税制優遇措置の影響
政府の住宅購入支援策(住宅ローン控除・贈与税非課税措置など)が後押しし、「買えるうちに買おう」という心理が働いていることも要因の一つです。
まとめ
前編では、中古マンション価格が高騰している背景を解説しました。
では、今後の市場はどうなるのか? 価格はさらに上がるのか、それとも下がる兆しがあるのか? 後編では、今後の価格動向の予測や、後悔しないマンション購入のポイントを詳しく解説します。
これからマンションを買うべきか悩んでいる方や、将来の市場を知りたい方は、ぜひ後編もお読みください。