40代のリアルな貯蓄事情【後編】

前編では、40代の貯蓄実態について、平均・中央値・年収別のデータをもとに現状を確認しました。
特に「なぜ貯金が増えないのか」という背景には、教育費・住宅ローン・親の介護など、複数の大きな支出が重なる40代ならではの事情があることがわかりました。
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では、そのような状況の中、私たちは老後にどう備えていけばよいのでしょうか?
後編では、老後に必要な資金の目安と、40代からでも始められる現実的な備え方をご紹介します。
「老後貧乏」や、逆に「貯めすぎて楽しめなかった」と後悔しないよう、自分自身に照らし合わせながら考えていきましょう。
老後に必要な生活費はどのくらい?
総務省「家計調査」や生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人の老後生活費の目安は月25万円前後とされています。
仮に厚生年金で月20万円を受給できた場合でも、毎月約5万円(年間60万円)が不足します。
老後が20年続くとすると、単純計算で約1,200万円の不足となります。
※出典:家計調査年報(2023年)65歳以上の夫婦のみの無職世帯
※消費支出は65~69歳の世帯が最も高く、年齢とともに減少傾向
この調査では「持ち家」が前提となっているため、賃貸での生活では家賃分の支出も追加されます。
また、医療・介護費、税負担、住宅の修繕費なども加味すると、老後資金が2,000万円を超えるケースも少なくありません。
年金制度に対する不安
かつては「年金があれば老後は安心」とされていましたが、今の40代が老後を迎える頃には、日本の経済や年金制度の先行きは不透明です。
- 年金の支給開始年齢の引き上げの可能性。
- 少子高齢化による制度の持続性の不安。
- 受給額は現役時代の収入に大きく依存します。
このような背景から年金だけに頼るのはリスクが高く、自助努力がますます重要になっています。
老後に必要な貯蓄額の目安
それでは穏やかな老後を過ごすためには、いくら貯蓄が必要なのでしょうか?
- 老後生活にゆとりを持たせるなら、夫婦で2,000万円〜3,000万円の金融資産が一つの目安
- 住宅ローンを含む借金の完済、子どもの独立後であることが前提
- 長寿リスクを考えるなら、30年を視野に入れることも必要
ただし、これは一例でありライフスタイルや健康状態、住まいの形態によって必要額は大きく異なります。
40代からでもできる備え方
老後まであと20年近く残されている40代は、まさに長期投資のラストチャンスです。
今後はリスクの少ない債券やバランス型ファンドなどへ徐々にシフトしつつ、今のうちに資産形成を始めておくことが肝心です。
主な備え方をいくつか紹介します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 毎月5,000円から積立可能。所得控除があるため節税効果もある。
- 60歳まで引き出せないが、老後資金づくりには最適。
新NISA
- 少額から長期投資が可能。非課税で資産を増やせる仕組み。
- いつでも引き出せるため柔軟性が高い
企業型DC(確定拠出年金)/マッチング拠出
- 勤務先に制度がある場合は、活用を検討する。
- 企業拠出+自己拠出で効率よく資産形成が可能。
家計の固定費の見直し
- 通信費、保険料、サブスクなど固定費の見直しで、年間数十万円の余裕が生まれることも。
老後も収入を得る手段の確保
- 副業やリスキリング、長く働ける職場選びも立派な備えをもっておきましょう。
40代からの投資シミュレーション
では、実際にどのくらい準備できるのか、シミュレーションで具体的に見てみましょう。
40歳、貯蓄ゼロからスタートの場合
月8万円 × 年利6%運用 × 20年 →60歳で約3,696万円
40歳、すでに2,000万円ある場合
年利5%運用 × 20年 → 60歳で約5,300万円
60歳時に高配当株へ3,000万円投資する場合
配当3% → 年90万円 × 20年 → 80歳までで約1,800万円の収入
このように、40代からでも計画的に老後資金を準備することは十分可能です。
重要なのは、無理なく継続すること、そしてリスクを平均化できる長期積立を基本とすることです。
年齢が上がるにつれリスクを取りにくくなるため、徐々に債券やバランス型ファンドへシフトしながら投資を続けましょう。
まとめ
老後に必要なお金は、想像以上に多く、年金だけではカバーしきれないのが現実です。
しかし、40代からでもできることはたくさんあります。
大切なのは「今、自分に何ができるか」を知り、無理のない範囲で行動を始めること。
まずは自分に合った制度や方法を選び、小さな一歩から将来の安心へつなげましょう。
