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2025/07/23 10:02

2025年 空き家問題を考える【後編】

少子高齢化や都市構造の変化に伴い、空き家問題は2025年を境に一層深刻化すると見込まれています。

前編で取り上げた現状と原因を踏まえ、後編では法改正や行政の動き、民間の再活用事例、そして私たちが取るべき行動まで、具体的な対策と展望をわかりやすく解説します。

 

前編の内容はこちら≫

 

不動産市場への影響

空き家問題により、不動産市場全体の冷え込みが懸念材料です。特に以下の点が不動産価格の下落を引き起こすと予測されています。

不動産の相続増加
相続などの一般承継によって所有権が移転するケースが増えており、空き家が市場に放出される要因となっています。

固定資産税の負担回避による売却増
高額な固定資産税を避けるため、空き家を手放す動きが広がっています。

少子化による需要の減少
人口減少により住宅需要が縮小し、物件の供給過多が進行しています。

 

空き家関連の法改正とその影響

空き家対策を強化するため、国による法改正が進められています。

 

相続登記の義務化(2024年4月〜)
費用や手間を理由に放置されていた登記が義務化され、自治体による所有者の特定が可能となりました。
省エネ基準の厳格化(2025年4月〜)
リフォーム時に断熱・省エネ性能を満たす必要があり、改修費用が増大。これにより、再建築不可物件の市場価値が低下する恐れがあります。

固定資産税の優遇除外
「管理不全空き家」は住宅用地特例の対象外となり、固定資産税が最大6倍に引き上げられるケースも。指導命令や行政代執行のリスクも発生します。
解体費用補助制度
一部の自治体では、上限100万円までの解体費補助制度を設けていますが、依然として負担は大きく、空き家活用は容易ではありません。

 

老朽マンションの空き家とスラム化の懸念

都市部では、築年数の古いマンションにおいても空き家が増加しています。特にファミリー向けマンションでは、次のような課題が顕在化しています。

  • 高騰する修繕費を高齢の所有者が負担できない
  • 相続人が引き継がず、所有者不明住戸が増加
  • 管理組合の合意形成が難航し、老朽化が進行

 

このままでは、一部のエリアでマンションのスラム化が現実となる恐れがあります。状況を打開するには、住み替え支援や出口戦略の設計、そして官民連携による包括的な対応が求められるでしょう。

一方で、都市部では家賃の高騰や住まい確保の難しさが課題となっています。

空き家があるにもかかわらず「住める家が足りない」という矛盾が生じており、これを解消するには行政による空き家のマッチング支援や、民間・NPOによる再活用の仕組みづくりが不可欠です。

 

魅力ある街づくりと官民連携の重要性

空き家問題を根本的に解決するには、地方自治体と民間事業者との連携が欠かせません。 たとえば、国土交通省は2025年2月28日、「空き家対策の推進に関する官民連携イベント(九州エリア)」を実施しました。こうした取り組みを通じて、全国各地で連携の強化が進んでいます。

 

空き家の再活用事例と民間の取り組み

全国各地では、空き家を地域資源として活用する動きも広がっています。

  • 地域住民が集うカフェやコミュニティスペースへの転用
  • 古民家を宿泊施設や体験施設に改修
  • 若手起業家向けのシェアオフィスやコワーキングスペースへの転用
  • 「みんなの0円物件」など、マッチング支援プラットフォームの活用


行政・民間・市民が連携し、空き家を「地域資源」として再生する視点が、これからの都市・地域づくりに必要です。

さらに、高齢化に対応した施策として「立地適正化計画」の推進も進められています。これは医療・福祉・商業・交通といった都市機能を拠点に集約し、持続可能なコンパクトシティを形成する試みです。

 

もしも空き家を相続したら

自分が空き家を相続することになった場合、以下のような対応が必要です。

現状把握
家屋・土地の状態や登記状況を確認し、相続登記を行う。

専門家への相談
不動産会社や司法書士、税理士などの専門家に早めに相談する。

最新情報の収集
法改正、税制度、補助金制度などの情報をこまめにチェックする。

 

まとめ

空き家の増加は、今や止められない時代の流れです。

放置された空き家は近隣住民、地域社会、そして不動産市場全体に悪影響を及ぼしますし、 不動産投資家にとっても、市場の供給過多による価格下落リスクは看過できません。

また空き家問題は、高齢者世代だけでなく若い世代の生活にも密接に関わっています。「親が施設に入る」「実家をどうするか悩む」など、誰にとっても起こり得る身近な課題です。

将来的に空き家を相続する可能性がある場合は、親世代と住まいについて話し合う機会を持ち、資産の整理や今後の管理方法についてあらかじめ考えておくことが大切です。 

今から少しずつ準備を進めることが、空き家の放置を防ぎ、家族と地域を守る第一歩となります。

 


 

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