2025年 空き家問題を考える【前編】

空き家はすでに都市部から地方にかけて急増しており、2025年には身近な生活を脅かすリスクとして、私たちに影響を及ぼし始めると予測されています。
ただの使われていない家と思われがちですが、放置された空き家は防災・防犯・景観・地域経済に深刻な影響を及ぼします。
記事の前編では「日本の空き家の現状」「なぜ増えているのか」「放置すると何が起こるのか」をわかりやすく解説します。
空き家の定義と現状
国土交通省の定義によると、空き家とは「住宅・土地統計調査で1年以上使用されていない建物」のことです。
総務省の調査では日本には約900万戸の空き家があり、そのうち約385万戸が管理が行き届いていない「放置空き家」とされています。
この数は2018年からの5年間で51万戸増加し、2025年には420万戸、2030年には470万戸を超えると予測されています。
つまり、約3軒に1軒が空き家になる可能性があるのです。

空き家が増える理由とは?
空き家問題の背景には、社会的・経済的な多くの要因があります。
高齢化
団塊世代の持ち家率は高く、75%以上が戸建て住宅を所有しています。ですがその家が相続されず空き家になるケースが急増しています。
都市集中化
若い世代が地方から都市へ移住し、実家が無人になるケースが増えています。
相続トラブル・所有者不明
かつては相続登記が任意だったため「誰のものか分からない家」が数多く存在し、管理者不明で国としても手がつけられずそのままになっているパターンや、相続時にもらって困る不動産の場合、相続されずにそのままになっているケースもあります。
新築志向
日本人は中古住宅より新築を好む傾向があり、古い家を敬遠する傾向があります。また耐震構造も年々厳しくなっているため、リフォームよりも新築のほうがコストがかからないこともあり、中古販売が困難なことも影響しています。
外国人投資家の放置
都市部では、買い占め後に放置されるマンションも増加傾向にあります。緊急連絡が取れないため設備トラブルや水漏れなどの対応が遅れたりと、自治会や管理組合が機能不全になるリスクも現れてきています。
これらが複雑に絡み合い、空き家問題はますます深刻化しています。
地方で深刻化する空き家の増加
空き家の増加は特に地方で深刻です。人口減少と高齢化が進む中、使われなくなった家がそのまま放置されるケースが目立ちます。
戦後の急激な都市化により、丘陵地や湿地まで住宅地として開発され、日本は「持ち家社会」が形成されました。しかし現在では、中心部と比べて利便性に劣る地域は敬遠され、空き家が目立つようになっています。
地方自治体では空き家増加により公共サービスの維持が難しくなり、さらなる人口流出を招く要因です。
特に山梨県、和歌山県、徳島県、鹿児島県ではすでに空き家率が20%を超え、不動産価値の下落が懸念されています。
空き家がもたらすリスクとは?
空き家が増えることで、地域にはさまざまな悪影響が及びます。
- 建物の老朽化による倒壊事故
- 異臭や害虫、野生動物の侵入による衛生環境環境の悪化
- 不法投棄や放火などの治安の悪化
- 景観の悪化や街のゴーストタウン化
空き家は単に「人が住んでいない家」ではなく、「地域全体に悪影響を及ぼす存在」になりうるのです。
「空き家を手放せない」本当の理由
空き家を放置してしまう理由は単なる怠慢ではなく、複雑な心理的・経済的事情も含まれています。
- 心理的な葛藤:「親が住んでいた家を壊せない」「思い出が詰まっている」
- 経済的負担:建物の解体費が100万〜250万円と高額である。
- 税制上の不利:更地にすると固定資産税が最大6倍になるケースも。
- 売却困難:買い手がつかず、売却の見通しが立たない。
- 物置代わり:相続後も時間がなく遺品整理が進まない、持ち主が高齢で片付けができない。
これらの理由から、望んで放置していない空き家が全国に増えているのです。
海外の取り組み
人口減少は日本に限らず、他の先進国でも共通の課題です。では、海外では空き家問題にどのように取り組んでいるのでしょうか。
フランス:5年以上放置された空き家に「空き家税」を課税。
韓国:ソウルで空き家をリノベし、若者に安価で貸し出す都市再生事業。
ドイツ:空き家を地域で共同管理し、文化施設や保育所として活用。
これらの対策は、日本においても参考になるでしょう。
まとめ
空き家は「ただの空いている家」ではなく、地域に悪影響を及ぼす存在です。 しかし一方で、正しく活用すれば「地域資源」に生まれ変わる可能性もあります。
後編では、空き家の再活用事例や行政の取り組み、そして私たちができる具体的な行動についてご紹介します。
空き家を「負の資産」から「地域資産」へと変える道を、一緒に考えていきましょう。