2025年の日本における投資現状【後編】

前編では、2025年を迎えて変化した投資トレンドや投資対象。そして投資人口の拡大について取り上げました。
投資市場は年々拡大していますが、海外と比較すると日本はいまだに現金主義が根強く残っているのが実情です。
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後編では、なぜ日本で投資が思うように進まないのかという課題に焦点をあて、海外との比較、心理的な要因、金融リテラシーや資産格差との関係性について詳しく掘り下げていきます。
海外との比較
日本取引所グループの調査によると、日本の家計金融資産のうち現金・預金が占める割合は約50.9%であり、米国(13%)やユーロ圏(34.1%)と比較して極めて高い水準です。
また、株式などのリスク資産の保有比率も日本では約19.6%にとどまり、米国(53.3%)、ユーロ圏(32.1%)と比べて著しく低いという現状があります。
この背景には、戦後のインフレや円の急落といった経済的トラウマ、銀行への根強い信頼、高齢化社会の進行、そして欧米と比べて遅れた金融教育文化といった複合的な要因があると考えられます。
投資をためらう人々の意識と背景
SNSやネット証券の普及により投資環境は整い、投資に対する心理的ハードルも以前より低くなってきています。
手続きの簡素化も進んでいるにもかかわらず、日本では他国と比べて投資人口の増加は限定的です。その背景には、次のような心理的要因が潜んでいます。
- 何から始めればよいか分からない。
- 余裕資金がない。
- 元本割れが怖い。
- 手続きが面倒。
- そもそも興味がない。
このような要因は、投資未経験に起因する漠然とした不安と言えるでしょう。
とれるリスクの範囲やリターンの仕組みを理解していないことから、投資はギャンブルのようなものだという誤解を持ってしまう人も少なくありません。
こうした不安を払拭し、個人に合った無理のない方法で投資を始めるためには、基礎的な金融知識の普及が不可欠です。
金融リテラシーの現状と課題
2022年に金融広報中央委員会が行った調査では、「金融知識に自信がある」と答えた日本人はわずか12%にとどまりました。これは、米国の71%と比べて非常に低い水準であり、日本人の金融知識の不足が深刻な課題であることを示しています。
金融教育への主な課題
- 成人の金融知識の不足。
- リスクに対する理解の不足。
- 学校や家庭での金融学習の機会の欠如。
政府はこうした課題に対応するため、金融経済教育の受講率を7%から米国並みの20%へ引き上げることを目指し、2022年度から高校における金融教育を義務化しました。
さらにセミナーや勉強会を通じた啓発活動や、NISA・iDeCoの普及を進めています。
金融リテラシーの向上は、個人の資産形成を支えるだけでなく、日本経済の持続的な成長にもつながる重要な課題であるため改善が急がれます。
資産額と投資行動の関係
金融リテラシーの格差は、単に教育の量だけでは語れません。
資産額と投資行動は密接に関係しており、一般的に保有資産が多いほど、投資に回せる金額やその割合が高くなる傾向があります。
資産にゆとりがある人ほど、株式や不動産、オルタナティブ投資といったよりリターンの高い投資手法や多様な戦略を選択する余地があり、結果として投資経験が豊富になりやすいと言えます。
そうした人たちは自然と金融知識やスキルも蓄積される一方、資産に余裕のない層は投資に回せる資金が少ない、あるいは投資に踏み出すこと自体が難しい状況です。
結果として投資を行える人とそうでない人との間で、資産格差だけでなく、金融リテラシーの格差も拡大していく可能性があると言えるでしょう。
さらに、資産が多い人ほど一定の損失を許容できるため、リスクを取る姿勢が積極的になりやすく、これが結果として投資パフォーマンスの差にもつながります。
こうした構造が続くと「金融格差」が固定化され、将来的な経済的階層の分断につながる恐れもあります。
このような背景からも、資産形成における教育や支援策は、所得・資産水準に応じて段階的・包括的に提供されることが重要でしょう。
まとめ
現在の日本では日本円の価値が下落傾向にあり、じりじりと生活水準が低下していく中で、多くの人がその変化に気づかないまま過ごしています。給与所得の伸びも限定的である中、将来に向けた資産形成の重要性は一層高まっています。
政府は国民が自立して投資に取り組めるよう、制度改革と金融教育の拡充を進めていますが、投資率の向上には制度だけでなく、一人ひとりの意識改革と継続的な金融リテラシーの向上が欠かせません。
訪れたチャンスを逃さないためにも正しい金融知識を身につけ、自分に合ったリスクの範囲内で健全な資産形成を行っていくことが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。
