確定拠出型年金改正でどう変わるのか?【後編】

前編では、個人が自分で積み立てるiDeCoについてお伝えしました。
後編では、企業が従業員のために掛金を出してくれる「企業型DC」の改正について解説していきます。
<関連記事>確定拠出型年金改正でどう変わるのか?【前編】
2025年時点でiDeCoの加入者が約363万人なのに対して、企業型DCの加入者は862万人。
多くの方にとって、すでに身近な制度になっているのです。
「よく分からないまま放置している…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、実はとても心強い仕組みです。
その企業型DCが、これからもっと利用しやすく安心できる形へと改正されていきます。
企業型DCの主な改正ポイント(予定も含む)
掛金の上限アップ
毎月の拠出限度額が5.5万円 → 6.2万円 に。老後資金を増やすチャンスが広がります。( 2027年1月~予定)
マッチング拠出の制限撤廃
「会社と同じ額まで」という制限がなくなり、自分の意思でより多く積み立てられるように。
例:会社が1万円だった場合、今までは1万円までしか拠出できなかった。改正後は会社が1万円でも5.2万円まで拠出可能。( 2026年4月~)
制度の整理・統合
中小企業向けの「簡易型DC」の廃止。(2026年4月~)
情報開示の強化
手数料や運用成績が見えやすくなり、「どの金融商品が自分に合うか」判断しやすくなります。
以前は信託報酬が1%台の割高な商品も多く、インデックス商品も少なかったですが、これも改善されていくでしょう。(施行日未定)
iDeCo同様に企業型DCも受け取り時に税金がかかりますので、シミュレーションは重要です。
改正によるメリット
老後資産を自分で設計していく上で、非常に心強いメリットが生まれます。
従業員のメリット
拠出可能額が増える
制度の上限引き上げにより従業員がより多く掛金を拠出でき、老後の資産形成がしやすくなります。
柔軟性の向上
マッチング拠出の上限制限撤廃により、自分の意思で積み立てがしやすくなります。
透明性・情報開示の強化
運用商品の手数料・実績情報が見やすくなり、加入者が適切に判断できるようになります。iDeCoの方が同じ商品でも信託報酬が安い場合があるので見比べは必要ですが、この差も縮まっていき制度全体への信頼も向上するでしょう。
企業のメリット
企業の拠出金は給与扱いされないため、社会保険料の算定対象に含まれません。
そのため企業の社会保険料負担は軽減し、従業員の毎月の手取りは増加します。(※マッチング拠出は従業員が上乗せした掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となるため別。)
ただし社会保険料が下がることで、将来受け取る年金額もわずかに減る可能性があります。
どの程度影響があるかは人によって異なりますので、自分のケースをシミュレーションしておくことが重要です。
iDeCoと企業型DCの関係も変わる
もうひとつ見逃せないのが、iDeCoとの関係性です。
これまでは、iDeCoの拠出限度額が「公的年金の種別」や「企業年金の有無」によって細かく分かれていて、非常に複雑でした。
しかし今後は、企業型DCとiDeCoを合わせた限度額が一本化される見込みです。
また、iDeCoの加入期間も70歳まで延長されることで、企業型DCの利用期間と歩調が揃います。
実際には企業型DCは60歳、遅くとも65歳で資格を失うケースが多いため、その後はiDeCoに移して70歳まで運用を続けることが可能になります。長く働きながら資産形成を続けたい人にとっては、大きな後押しになるでしょう。
まとめ
確定拠出年金制度は2001年に創設され、当初は企業型が中心でした。
時代の流れとともにiDeCoも普及し、今や両者は対等な存在へと近づいています。
今回の企業型DC改正は、掛金の上限アップ・マッチング拠出の自由度拡大・情報開示の強化など、どれも加入者にとってうれしい変化です。
公的年金だけでは老後に不安が残る時代。だからこそ企業型DCやiDeCoをどう活かすかで、未来の安心度は変わります。
ぜひこの機会に、自分の老後設計を見直してみてはいかがでしょうか。
