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2025/09/12 09:24

2025年 暗号資産制度改正の全体像【後編】

前編では主に、暗号資産に対する金融商品取引法(=金商法)による規制の導入や改正の方向性について解説しました。

 

前編の記事はこちら⇒


後編となる本記事では、すでに2025年6月に改正が成立した資金決済法の内容と、暗号資産を巡る政府の全体的な制度設計の動きに焦点を当てていきます。

 

資金決済法の改正ポイント

 

2025年6月6日に成立した、資金決済法で盛り込まれた主なポイントは以下の3つです。

  • ステーブルコイン(信託型含む)の裏付け資産の管理・運用の柔軟化
  • 「国内保有命令」の導入(顧客資産の海外流出防止)
  • 「仲介業者制度」の創設(交換業と仲介業を明確に区別)

 

ステーブルコインの法整備

 

ステーブルコインは、特定の法定通貨や資産(円・ドルなど)と価値が連動するように設計された暗号資産で、価格の安定性を特長とし、決済・送金・資産保全などに利用されます。

 

2025年の法整備ポイント

 

  • 信頼できる法人のみが発行可能
  • 準備金の保有義務と分別管理の徹底
  • 利用者保護を前提とした償還制度の導入
     

これにより、日本国内での安全なステーブルコイン活用が可能となり、海外ステーブルコインへの依存を減らすことが期待されています。

 

主なステーブルコインの例

 

  • USDC:イーサリアム上で動作し、米ドルと同価値(1USDC=1ドル)が維持される。スマートコントラクトで発行・交換が可能。
  • JPYC:日本円と同価値(1JPYC=1円)で設計され、複数のブロックチェーン(イーサリアム、ポリゴン等)に対応。
     

「国内保有命令」の導入

 

2022年のFTX破綻では、日本国内の顧客資産が海外に保管されていたため、返還が困難となる深刻な事態が発生しました。

この教訓を踏まえ、今回の改正では、暗号資産交換業者に対して顧客資産を国内に保有させる命令を出せる制度が新設されました。

命令に違反した場合には業務改善命令や業務停止命令の対象となり、資金の海外流出リスクを抑えることで投資家資産の保全が強化されます。

 

仲介業者制度の創設

 

新制度では、「交換業者(取引所)」とは別に、「売買の媒介・代理・紹介」のみを行う仲介業者が登録制で認められるようになりました。

暗号資産の取引仲介に関して、従来の交換業者(コインチェック、bitbank、SBI VCトレード、GMOコイン、BITPoint)などとは別に、新たに「仲介業」に特化した登録制度が導入される予定です。

この制度の導入で、投資家や市場に多くの利点がもたらされます。

 

投資家のメリット

  • 取引所に依存しない、多様な選択肢の確保。
  • 仲介業者は取引の当事者でないため、中立的な立場での情報提供が可能。
  • 金融庁の監督下で運営されるため、詐欺的な勧誘や無登録業者の排除が期待される。

 

市場・事業者のメリット

  • 取引所と仲介業の役割分担が進み、業務の専門性が向上。
  • 登録制により、無登録勧誘業者の排除と市場の健全化が進む。
  • フルライセンスが不要になるため、中小事業者でも参入しやすくなる。
  • 新たなビジネスモデル(高齢者向け仲介、法人売買代理等)の展開も可能に

この制度は単なるプレイヤーの追加にとどまらず、業界全体のインフラを見直す制度的改革と位置づけられます。

 

暗号資産の区分化と規制の明確化

 

暗号資産は用途や性質によってリスクが大きく異なるため、 2025年の制度設計では暗号資産を機能・目的に応じて類型化し、適用法を区分するアプローチが採られます。

 

主な区分と概要

区分化によって投資家の選択肢・リスク管理・税務処理を整理するための基盤ができました。

 

  • 決済通貨型:ビットコインなど。主に支払い・送金手段として使用。
  • プラットフォーム型:イーサリアムなど。スマートコントラクト基盤となる暗号資産。
  • ユーティリティトークン型:サービスやDApps内で使用されるトークン。
  • ステーブルコイン型:法定通貨と連動し、価格が安定したトークン。
  • セキュリティトークン型:有価証券と同様、配当や収益分配を伴う投資対象型トークン。

 

導入される「類型」制度とは

 

類型化の導入によって、適用法の明確化が図られました。

 

類型①:資金調達・事業活動型 ICOやSTOなど、投資・資金調達が目的。

→金商法適用(情報開示・詐欺防止・インサイダー規制)が適用される。

類型②:非資金調達・非事業活動型 ビットコインのように発行者が不在で投資性が低い。

→資金決済法などの利用者保護が中心の法律が適用となる。

このように、性質に応じて法制度を柔軟に使い分ける方針です。

 

まとめ

2025年の法的整備は、かつて「野放し」とも言われた暗号資産市場に対し、秩序ある制度のもとで安全・健全に取引できる環境を築く、大きな転換点となりました。

こうした規制アプローチにより、投資家・事業者・利用者それぞれの立場で安心と信頼が生まれ、今後は市場の拡大だけでなく、グローバルな競争力の向上にもつながることが期待されます。

 


 

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