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makeA事務局
2025/09/10 09:11

2025年 暗号資産制度改正の全体像【前編】

暗号資産(仮想通貨)市場の拡大に伴い、日本でも投資家保護と税制の公平性を目的とした制度改革が進められています。

2022年のFTX破綻や海外との制度格差が課題として浮上し、国内でも法制度の見直しが本格化しました。
2024年までは資金決済法が中心となってきましたが、2025年からは暗号資産のうち投資性が強いものについて「金融商品取引法(以下、金商法)」が適用される方針です。

この記事では金商法適用によって起こる変化とそのメリット、今後の制度への期待について最新情報を解説します。

 

金商法への適用が意味すること

 

現在、暗号資産を金商法で定義する方向が検討されています。

金商法は、有価証券などの販売や取引に関わる資金調達・投資のルールを定めた法律であり、暗号資産がその対象となることで、法的な投資対象としての明確な位置づけが与えられることになります。

 

金商法定義の主な目的3点

 

情報開示の強化
資金決済法は消費者保護が中心で、リスク情報や事業計画の開示が義務づけられていません。
投資詐欺の防止
制度の隙を突いた詐欺的なプロジェクトが存在しており、法的な対応強化が求められています。
投資家保護の制度的裏付け
現在の制度では利用者保護が主で、投資家への保護が不十分とされています。

 

金商法適用によって得られる主なメリット

 

プロジェクトの透明性向上(ホワイトペーパーの義務化)
金融庁によるチェック体制が整備され、虚偽記載には罰則が科されます。
 

詐欺的トークンの排除
発行目的、資金使途、運営体制、リスクの情報開示が義務化され、質の低い案件が排除されやすくなります。
継続開示義務の導入
上場企業と同様、発行後も進捗や財務情報の報告が義務づけられ、長期投資の判断材料が得られます。
販売業者の登録制
無登録での販売は禁止され、認可を受けた信頼性のある業者のみが市場に参加可能になります。
発行元の信頼性の可視化
法人の実体、財務状況、資金の使途が明確になり、投資判断の材料が増えます。
税務情報提供義務の強化
交換業者には、顧客の残高や取引履歴の提出義務が課され、課税の透明性が向上します。

 

新アセットクラスとしての意義

 

セキュリティトークンやICOなど投資性の高い暗号資産には、技術・運営・財務の多面的な評価が必要です。金商法の枠組みを適用することで、投資対象としての透明性と予見性が向上します。
一方で、ビットコインのように発行主体が存在しない暗号資産もあり、すべてを一律に金商法で扱うのは現実的ではありません。

しかし、資金決済法では対応しきれない投資商品としての性格を持つ暗号資産においては、金商法の適用は不可欠な制度改革といえます。

 

インサイダー取引規制の導入

 

これまで暗号資産市場には、インサイダー取引に関する明確な規制がありませんでした。
2025年の法改正では、未公開情報をもとにした不正取引の禁止規定が新たに導入される方向で検討されています。

プロジェクト関係者は非公開情報の取り扱いに注意が必要。
違反時は刑事罰や課徴金の対象。
市場の信頼性が高まり、機関投資家の参入も期待。

 

金商法の税制改正(個人・法人)

 

制度改正は、個人と法人で異なる方向性を持ちます。

 

個人:現行制度を維持

 

2025年時点では、個人投資家に関する大きな税制変更はなく、雑所得・総合課税が維持されています。

所得が高いほど税率が上がる。(最大55%)

損益通算・損失繰越は不可。

NFTやステーキング報酬も課税対象。


法人:自社発行トークンの課税が緩和

 

法人に関しては、自社発行トークンについての課税ルールが大きく変更されました。
これまでは、期末時点の評価額に含み益が出ていれば、売却していなくても法人税の対象となっていましたが、2025年の改正では、実際に売却(利益確定)するまで課税されない仕組みに変更されました。

 

具体例

企業Aが自社トークン「ABC」を1万枚発行(1ABC=100円)
期末時点で1ABC=200円に値上がりしても、売却しなければ課税されません。

 

今後の期待される制度:申告分離課税と損益通算

 

現在、金融庁では以下の制度導入を検討中です。

他の所得と通算できる「損益通算制度」

損失を3年間繰り越せる「損失繰越制度」
これらは将来的に導入が期待される「申告分離課税」とあわせて設計されており、

所得額にかかわらず一律20%課税。

他の金融商品と同様、損益通算・損失繰越が可能。
といった仕組みが構築される可能性があります。
現時点では改正案の提示段階で、法案成立は2026年以降となる見込みです。

 

まとめ

 

2025年の制度改正は単なる規制強化ではなく、投資家保護・税制の合理化・市場の健全化を実現するための重要な一歩です。
税制面でも法人向けだけでなく、個人投資家に対しての法整備にもさらなる改善が期待されています。

後編では暗号通貨を巡る、もう一つの重要な枠組みである「資金決済法」の法改正について詳しく解説します。

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