マガジン

makeA事務局
2025/09/04 14:46

「デジタル給与」って何?キャッシュレス時代の新しい給料のカタチ【後編】

前編ではデジタル給与の仕組みや導入の背景、そしてメリット・デメリットについてお届けしました。

 

【関連記事】「デジタル給与」って何?キャッシュレス時代の新しい給料のカタチ【前編】

 

今回の後編では実際に使える電子マネーの種類、導入手順、企業側・従業員側が気をつけるべきポイントまで、より実務に近い視点で深掘りしていきます。

 

利用できる電子マネー

 

現在、厚生労働省の指定を受け、デジタル給与としての利用が認められている資金移動業者は2025年7月時点で4社です。(※厚生労働省発表 2025年4月4日現在)

 

PayPay株式会社

 

企業が指定口座へ給与を振り込むと、PayPayアカウントに即時反映。スマホ1つで受け取り・支払いが完結します。アカウントに保有できる給与残高は最大20万円です。

 

株式会社リクルートMUFGビジネス

 

アプリ「エアウォレット」を通じて、最大30万円まで即時受け取りが可能。銀行口座との併用も柔軟です。

 

楽天Edy株式会社

 

給与を「楽天キャッシュ」として受け取れ、楽天市場などのサービスでそのまま利用可能。ポイント連携の魅力もあります。こちらの上限は10万円までです。

 

auペイメント株式会社

 

給与の受け取りはau PAY残高にチャージ。上限は10万円と定められており、スマートな生活との親和性が高いです。

 

すでに先進的な企業では導入が進んでおり、2024年9月にはソフトバンクグループ、2025年4月には三井住友海上が制度を取り入れました。

 

デジタル給与導入の流れと必要な手続き

 

導入に向けて何から始めるべきか?企業が実施すべきステップを、実務レベルで解説します。

 

1. 資金移動業者の選定

まずは、前述の4社の中から自社に適した業者を選びます。

選定にあたっては利用手数料、従業員の利用意向、自社で使用している給与システムとの連携できる資金移動業者を比較して選ぶとよいでしょう。

 

2. 労使協定の締結

労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で締結します。

協定では、対象者の範囲・上限金額・実施日などを明記しましょう。

 

3. 就業規則(給与規程)の改定

給与の支払い方法にデジタル給与を追加し、利用可能な事業者や運用ルールを記載します。

改定後は労基署への届け出と従業員代表の意見書の添付が必要です。

 

4. 従業員への周知と説明を行う

新制度について、社内説明会や社内報などで丁寧に共有しましょう。

 

説明するポイント

  • 導入の背景と目的
  • 現金化や払い戻しが可能であること
  • 利用できる電子マネーの種類
  • トラブル時の対応策(例:不正出金、破綻など)
  • 退職・転職時の取り扱い

 

5. 同意書の取得

デジタル給与は、希望する従業員のみが利用する給与支払方法です。

希望者には同意書を提出してもらいましょう。

 

記載項目の例

  • デジタル給与で受け取る金額
  • 資金移動業者の口座番号
  • 開始希望日
  • 上限金額を超えた場合の受取口座など

 

※同意書には決まった様式はありませんが、厚生労働省のWebサイトに同意書の例もあります。

従業員から同意書を受け取ったら、希望する開始時期よりデジタル給与の支払い開始となります。

 

注意点:使用している給与計算(業務)システムの確認

 

使用している給与システムが、デジタル給与に対応しているかを事前に確認しましょう。

未対応の場合はシステム変更やアップデートが必要になるため、コストと期間の見積もりも重要です。将来的にも柔軟に対応できるようにしておきましょう。

 

キャッシュレス化がもたらす未来

 

キャッシュレス化の進展により、給与の受け取りから買い物、公共料金の支払い、投資まで、すべてをスマホ1つで完結できる時代が近づいています。お金を引き出す行為自体が不要になり、生活のスピードが変わっていくかもしれません。

こうした変化は、私たちのお金の管理にも影響を与えます。

決済履歴が自動で記録され、支出の傾向や貯蓄が可視化されることで家計簿がいらなくなり、金融リテラシーも「見えないお金」との付き合い方にシフトした、新しい金銭教育が求められます。

ただしすべてが便利になる一方で、スマホやアプリの扱いに慣れていない高齢者にとっては、デジタル化が新たな壁となる可能性もあります。

また、災害時には停電や通信障害で決済手段が使えなくなるリスクも想定され、現金との「共存」も考える必要があるでしょう。

キャッシュレス化は単なる利便性の向上ではなく、暮らし方や社会のしくみそのものを変える大きな転換点になろうとしています。

 

まとめ

 

デジタル給与をはじめ、日々の買い物、将来の資産形成まで、すべてがスマホひとつで完結する時代に向かって、生活のスピードと選択肢が大きく広がろうとしています。

一方ですべての人がその波に自然に乗れるわけではなく、年齢や環境によっては不安や不便を感じる場面も生まれます。

キャッシュレス社会への移行は、便利さの先にある「より良い未来」を選び取るプロセスでもあります。その第一歩として正しい知識と柔軟な視点を持って、未来への準備を始めていきましょう。

 


 

一緒に読まれているコンテンツ

「デジタル給与」って何?キャッシュレス時代の新しい給料のカタチ【前編】
いいね