
前編では、オルカンが持つ圧倒的な合理性と、「10兆円」という信頼の重さについて触れました。しかし、いま世界の構図が決定的に変わりつつあります。
後編では、地政学リスクやサプライチェーン分断を踏まえ、これからの時代における分散投資のあり方と、全世界株を補完する戦略について解説します。
地政学リスク
米国とイスラエル対イラン:2026年2月28日、イランへの大規模な軍事攻撃が開始されました。このニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、中東情勢はかつてない激震に見舞われています。特に、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格は急騰しました。日本国内でもガソリン価格や電気料金の上昇が現実味を帯び、景気後退への懸念が日増しに強まっています。
ロシア対ウクライナ:ロシア側は東部ドネツク州の8割以上を制圧したと戦果を誇示する一方、アメリカの関心は中東へと移りつつあります。その影響で、ウクライナ和平に向けた三者協議は延期されました。
私たちが「全世界株式」というインデックスに資産を預けているとき、その中身には当然、こうした紛争の当事国や影響を受けるグローバル企業が含まれています。
インデックス投資の最大のメリットは「市場全体を丸ごと買う」ことですが、同時に、世界のどこかで発生する地政学リスクの利益と損失を、フィルターなしで受け入れることでもあります。
市場全体が沈む局面では、分散投資だけでは資産の目減りを防げません。今の世界は、私たちが長らく信じてきた「平和で右肩上がりの経済成長」という前提が揺らぎ始めた、不確実性の高い局面へと突入しています。
AIバブルのリスク
オルカンの成長を牽引してきた最大の要因は、米国の巨大IT企業、いわゆるビッグテックによるAI革命です。
ビッグテック各社は数十兆円規模の資金をAIインフラに投入し、巨大なデータセンターを建設し、最先端の半導体を確保し、計算資源を拡張し続けています。
しかし、「AIは期待ほど収益を生まない」という見方が広がれば、現在の株価を支えているPER(株価収益率)の前提は崩れる可能性があります。
これは、かつて安全資産と信じられていたグロソブ(世界の国債に投資するファンド)が、予想外の金利変動で凋落した歴史とも重なるものです。
オルカンを補完する3つの戦略
オルカンは依然として合理的な基盤です。しかし、動乱の時代を生き抜くには、その基盤の上に自分なりの戦略を構築する必要があります。
ここでは、3つの投資候補を紹介します。
① フィジカルAI
現在のAIブームはソフトウェア中心ですが、次の投資トレンドとして注目されているのが「動くAI」、すなわちフィジカルAIです。
ロボット、工作機械、センサーなど、日本企業はこの分野で世界的な競争力を持っています。ポートフォリオの一部にこうした銘柄を組み込むことで、オルカンの中では薄まってしまう日本の技術力に焦点を当てることができます。
世界的な人手不足という確定した未来に対し、解決策となるのが現場で動く精密機械であり、これが日本の強みです。
② ゴールド
国家間の対立が深まり、通貨への信頼が揺らぐ時代において、実物資産は重要な役割を担います。
資産の5〜10%を金に配分することで、株式市場とは異なる動きをする安全弁となるためです。
実際に2026年3月現在、金価格は歴史的な高値圏にあり、「経済への不信」に備える資産としての価値が意識されています。
③ 高配当株
オルカンの弱点の一つは、暴落時にキャッシュフローが生まれないことです。
その補完として、日本の高配当株や配当ETFを組み合わせる方法もあります。
銀行や商社などの大型企業は、安定した配当を支払うケースが多く、投資家に定期的な現金収入をもたらします。
そうすることで、心理的な安心感を保ちながら長期投資を続けることができるでしょう。
まとめ
平和な時代のインデックス投資は終わり、これからは「動乱の時代の資産形成」となります。
世界は不安定で国家間の対立も強まっていますが、私たちが10兆円規模の巨大な投資インフラを手にしたことは事実です。
20年後、30年後の未来を信じ続けるために、自分なりの根拠をポートフォリオの中に持つこと。それが今の時代に求められています。
どの国が勝つのかを当てる必要はありません。2026年という転換点に立つ私たちは、自らの手で未来を設計していく。それが、新しい時代の投資スタイルです。
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