
2026年2月9日。日本の金融史に残る出来事が起こりました。
三菱UFJアセットマネジメントが運用するeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)通称オルカンの純資産総額が10兆円を突破。
わずか1年で5兆円以上を積み上げた結果、日本の公募投資信託(ETF除く)として史上2番目の10兆円ファンドとなりました。(1位は同シリーズのeMAXIS Slim 米国株式(S&P500))
これは、日本人の投資観そのものが変わりつつあることを示す、象徴的な出来事です。
オルカンの成長スピード
オルカンは2018年に設定された、比較的新しい投資信託です。
純資産が1兆円を突破するまでにおよそ4年半かかりましたが、5兆円から10兆円へは、わずか約1年で到達しています。
これは日本の投資信託でも、異例の加速です。
特に2026年1月の資金流入は、新NISAの枠リセットと重なり、設定額は月間6605億円という過去最大を記録しました。
現在、日本での保有者は567万人以上です。
日本の生産年齢人口を考えると、10数人に1人がこのファンドを保有している計算になります。
かつて投資は一部の人が行う特殊な行為でしたが、オルカンは水道や電気のように、私たちの生活を支える資産形成インフラへと変貌しつつあります。
これは資産形成のスタンダードそのものが、変わり始めているからなのです。
オルカンが選ばれる理由
オルカンがここまで人気を集めた理由はいくつかあります。
新NISA制度
2024年に制度が刷新され、長期・積立・分散投資が税制面で大きく優遇されるようになりました。
この新しい制度の中で、最も教科書的な投資商品として選ばれたのがオルカンだったのです。
しかし、それ以上に重要なのはこのファンドの仕組みにあります。
自動リバランス
オルカンの真価は、自動で世界の勝者に乗り換え続ける仕組みにあります。
このファンドが連動しているのはMSCI ACWI (MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)という指数です。
この指数は、先進国23カ国、新興国24カ国、約2,700社以上の企業で構成されています。
これは世界の株式市場の約85%をカバーする巨大な指標であり、この指数が時価総額加重平均という仕組みで作られていることが重要です。
成長する企業は自動的に比率が増え、衰退する企業は自動的に比率が減るため、 世界経済の新陳代謝そのものを反映するファンドであるため、多くの投資家に選ばれているのです。
10兆円突破がもたらすメリット
オルカンの資産額が大きくなることで、オルカンに投資している人にもメリットがあります。
- 運用コストが下がる:運用会社にとって、システム維持費や人件費などの固定費は、資産が1兆円でも10兆円でも大きく変わりません。そのため規模が拡大するほど、投資家一人あたりの負担コストは極限まで下がります。
- 繰上償還の可能性が低くなる:投資家にとって最も避けたいのは、暴落よりも「ファンドの消滅(繰上償還)」です。資産規模が小さいファンドは、運用が赤字になれば途中で強制終了され、投資家は不本意なタイミングで利益確定や損出しを迫られます。
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運用の安定性がアップ:指数を構成する2,700以上の銘柄すべてを適切な比率で買い揃えるには、膨大な資金力が必要です。資産が少ないファンドは「主要な銘柄だけ買う(サンプリング法)」といった妥協を強いられますが、10兆円規模のオルカンは、すべての銘柄を完璧な比率で保有できるため、指数に連動する正確な運用ができるのです。
10年後の未来
では、この流れは10年後どうなっているのでしょうか。
世界株は長期的には年5〜7%程度の成長を続けてきたため、もしこのペースが続けば、10年後の資産は1.5倍〜2倍程度になる可能性があります。
株式市場では30〜50%の下落が定期的に起きますが、それでも歴史を見る限り、市場は時間をかけて回復してきました。
世界経済が成長する限り、オルカンの中では常に「今もっとも価値のある企業群」への最適化が続きます。ある意味でこれは、究極の他力本願型投資とも言えるでしょう。
個人が銘柄を選ぶより、市場全体に乗った方が合理的な正解とわかった今、積立を継続することこそが最適解と言えます。
まとめ
オルカン10兆円突破は、日本の個人投資家が低コストで市場全体に乗るという、合理的な土台を共有し始めたことを意味しています。
ですがオルカンは儲けるための魔法の道具ではなく、世界経済に参加するための乗り物にすぎません。
そして2026年現在、世界は決して平穏ではありません。
米中対立、地政学リスク、サプライチェーンの分断。世界は新しい時代へと向かっています。
このような環境の中で、全世界株という戦略は本当に十分なのか。
後編では、オルカンを補完する具体的な投資戦略について解説します。