【ESG資産の未来】2025年に注目される理由と世界への影響(後編)

前編ではESG投資の基本的な考え方や、注目される背景について解説しました。
後編では2025年を視野に入れたESG投資の未来展望と、社会や経済に与える影響、さらに直面する課題について考察します。
2025年に向けたESG投資の未来
ESG投資の急速な拡大は2025年以降も継続し、市場や社会全体を形作る重要なトレンドになると予測できるでしょう。今後さらに進化していくESG投資の影響について深掘りします。
規制の強化と標準化の推進
2025年には、各国の政府や国際機関がESG投資を推進するために、新たな規制を導入しESG投資基準の統一が進むと予想されています。
これにより、投資家が異なる地域や業界で同じ基準で企業を評価することが可能になり、投資家は透明性の高い情報をもとに、より的確な判断を行うことが可能になるでしょう。
社会問題への対応が必須に
これまでは「環境(E)」がESGの中心的なテーマでしたが、2025年以降は「社会(S)」要素への注目がさらに高まると予想されます。
パンデミックを通じて、社会的インフラや従業員の福祉が企業の成長に不可欠であることが浮き彫りになりました。これが「S」の重視につながっています。
2025年以降は、労働環境の改善や多様性の推進に注力する企業が増えると予想されており、特に国際的な人権基準に基づいた活動(ジェンダー平等、多様性、公平性の向上、労働環境、人権問題)が投資判断に影響を与えるようになるでしょう。
デジタル化の進展
AIやビッグデータを活用したESGスコアリングが一般化し、投資判断の透明性が向上します。
これにより、投資家はより効率的にESG対応企業を見極めることが可能になるでしょう。
このようなデジタル進化でESG投資の質が高まるうえに、範囲が広がることで個人投資家が気軽にESG投資に参加できるようになります。
つまりは投資対象としてのESG資産の裾野が、さらに広がると考えられるでしょう。
社会や経済への影響
2025年以降、ESG投資が社会や経済にもたらす変化について考えてみましょう。
企業の経営方針の転換
企業はESG要素を経営戦略の中心に据えるようになります。
・炭素排出量削減目標の設定や、再生可能エネルギーへのシフトが加速。
・労働環境の改善や、ダイバーシティを促進するプログラムの導入。
これらにより、企業が長期的な視点で持続可能な成長を目指す傾向がさらに強まるでしょう。
新たな雇用の創出と地域経済の活性化
風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーを含む、サステナブルエネルギーやグリーンテクノロジー関連の分野で雇用機会の増加が見込まれています。
また、ESG投資による資金が地方での再生可能エネルギープロジェクトや、地域コミュニティを支援するプログラムが地域経済を活性化させると期待されています。
アジア圏でもESG投資が拡大
現状ではESG投資市場を欧州とアメリカがリードしていますが、アジア太平洋地域では特に中国でESG投資の動きが著しい状況です。
三菱総合研究所の調べによると中国では名目GDPが日本の約3倍であるにもかかわらず、グリーン投資(環境に配慮した経済活動への投資)額は日本の5倍に達しています。
このようにESG投資は、今後も世界中でその重要性を増していくと考えられます。
ESG投資が直面する課題
好調に見える一方で、新しい手法であるESG投資の成長には課題も存在します。
グリーンウォッシング(偽装環境配慮)の問題
企業がESGに見せかけた取り組みを公表し、本質的な改善が伴わないケースが増加しています。投資家は表面的なESG情報に惑わされないよう、詳細なデータ分析が必要です。
評価基準の多様性
現在ESGの評価基準は統一されておらず、評価機関や地域によって基準が異なります。
世界的な標準化が進む一方で、地域独自の課題をどう反映するかが今後の課題と言えるでしょう。
投資リターンへの懸念
短期的な利益を求める投資家にとっては、ESG投資が十分なリターンを提供できるかどうかが懸念材料になります。
一部の市場では、ESG投資が利益追求よりも社会的意義を重視する傾向があり、リスクとリターンの投資バランスが不可欠といえます。
まとめ
2025年に向けて、ESG投資はさらなる成長を遂げると予想されます。
社会全体の意識が「持続可能性」へと向かう中で、投資家は利益追求と社会貢献を両立する新しいアプローチを模索していくことになります。
長期的な経済成長を両立させるために、次の時代を見据えた投資のあり方を考え、未来を共に築いていきましょう。