【ESG資産の未来】2025年に注目される理由と世界への影響(前編)

ESG投資への関心は、世界規模で急速に高まっています。
ブルームバーグ・インテリジェンスによると、2025年に想定される世界の運用資産残高140.5兆ドルのうち、ESG資産は53兆ドルとなり、運用資産額全体の3分の1を超えると予想されています。
前編ではESG投資の基本的な仕組みや、なぜ多くの注目を集めているのか理由を詳しく解説し、後編では2025年に向けてESG投資が社会や経済にどのような影響を与えるのか、未来の展望や新たな課題について探ります。
ESG投資とは?基本的な考え方
ESG投資とは、企業の環境(Environmental)、社会(Social)、管理体制(Governance)の要素を重視して、投資判断を行う手法です。
環境(E): 気候変動対策や自然資源の保護など。
社会(S): 労働環境、多様性、公平性への取り組み。
管理体制(G): 経営の透明性、株主との関係。
この考え方では短期的な利益ではなく、環境や社会に配慮しながら持続可能な成長を目指す企業が高く評価されます。
投資家も企業の財務データだけでなく、ESGへの取り組み状況などの非財務情報を重視して投資先を選ぶことが増えています。
ESGとSDGsの違いとして、SDGsは国や国際機関主導による「目標」であるのに対し、ESGはその目標を金融業界・企業主体で実現するための「行動規範」を指します。
ESG投資が注目される理由
なぜESG投資がこれほど注目されているのでしょうか?6つの背景について解説します。
投資家の価値観の変化
若い世代を中心に「社会に良い影響を与える投資」を求める意見が多くあります。
彼らは投資資金が環境への配慮や、社会貢献意欲のある企業に流れることを価値のあることと考えているため、ESG投資の人気が高まっているのです。
気候変動と環境保護の必要性
気候危機への対応として、課題解決を後押しする企業がESG投資の対象となっています。また資源の有効活用や廃棄物の減少は、結果として事業運用コストの削減にもつながります。
社会的責任の強化
新型コロナウイルスのパンデミック以降、企業の社会的役割がより注目されるようになりました。
労働環境や多様性、地域社会への貢献が重視されていて、満足度の高い職場環境の構築・整備は優秀な人材の確保や定着を促すため、企業側としてもメリットの大きい取り組みといえます。
規制とガイドラインの強化
EUの「タクソノミー規則」や米国証券取引委員会(SEC)のESG情報開示ルールの強化など、 環境活動への情報開示を義務化する動きが高まっています。
金融業界のトレンドシフト
2008年のリーマン・ショック以降、それまでの短期的利益追求型の経営・投資に対する批判が世界的に高まったこともありESG投資を後押しする動きが高まっています。
世界最大級の資産運用会社であるブラックロックは、ESG投資を中心に据える方針を発表し、この考え方が投資の新しいスタンダードになりつつあります。
このような大手の動きが、投資市場全体の方向性をリードしているのです。
企業の競争力向上
環境保全や社会貢献を提供するサービスは、ブランド価値を高め市場での差別化を図るだけでなく、社会全体からの信頼を得ることにもなり、長期的な成長と収益の拡大も見込めます。
増え続けるESG投資
ESG運用資産残高は2016年に22.8兆ドルだったところから、2025年末までには53兆ドルに達すると予想されるほど、急拡大したのは何故でしょうか。
この急拡大が実現した背景には、以下の要因があります。
透明性の向上
規制の整備だけでなく、企業が率先してESGレポートを発行することで、環境や社会への取り組みが明確化し、投資家にとって投資対象となるか判断がしやすくなりました。
パフォーマンスの実証
ESG関連ファンドが市場平均を上回るパフォーマンスを記録する事例が増え、投資家にとって魅力的な選択肢となっています。
政策と補助金の後押し
各国政府が再生可能エネルギーや脱炭素プロジェクトへの補助金を拡充したことで、ESG関連の市場が大幅に拡大しました。
企業のESG対応の進化
多くの企業がESG戦略を経営の中核に据えるようになり、投資対象が増えたことも資産増加の要因です。
また世界のESG資産の半分は欧州が占めていますが、近年20年でみると米国のESG資産が最も増えており、さらには日本を中心としたアジアからも増加するものとみられています。
まとめ
ESG投資は短期的な利益を追う投資方法ではなく、持続可能な未来を築くための重要な投資手法として位置づけられました。
2025年に向けて、この重要性はさらに高まると予想されています。
後編では、2025年以降にESG投資が社会や経済にどのような影響を与えるかを見通し、ESG投資が抱える課題についても掘り下げていきます。次回もぜひお楽しみに!