<家計貯蓄率上昇で消費が停滞>日本経済の回復には投資の拡大が鍵?【前編】

日本における「家計貯蓄率の上昇」と「消費の伸び悩み」は、現在の経済状況を象徴する重要なキーワードです。
なぜ今、日本では貯蓄志向が強まり消費が鈍化しているのでしょうか。
この記事の前編では、日本の経済状況と背景に焦点を当て、家計貯蓄率が上昇している理由、そして消費が伸び悩んでいる原因について考察していきます。
家計貯蓄率上昇の現状
「家計貯蓄率」とは、家庭が所得のうちどれだけを消費に使わず、貯蓄として残しているかを示す割合のことです。
総務省の「2023年家計調査報告(貯蓄編 二人以上世帯)」によると、年平均の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)が前年に比べ、0.2%の増加となり、5年連続の増加となるとともに、2002年以降で最多となっ たことが発表されました。
日本で貯蓄率が上昇し続ける理由は、なぜでしょうか。
家計貯蓄率上昇の背景
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、感染リスクの高い外出や旅行を避けるようになり、外食や娯楽費用が減少しました。
またリモートワークの普及により通勤にかかる費用も削減されたため、生活費全体が抑えられる傾向にあります。
こうした状況が家計の余剰資金を増やし、結果として貯蓄に回されているのです。
物価高と節約志向
世界的なエネルギー価格の高騰や、円安による輸入品の値上げが相まって、日本では食品や日用品の価格が上昇しています。
このようなインフレにより家庭の支出が増える一方、収入の伸びが追い付かないため、家計の支出を必要最小限に抑え、将来に備えて貯蓄する「節約志向」が強まっているのです。
消費の伸び悩みによる経済への影響
消費は経済成長の原動力であり、消費が活発化することで企業の売上が増え、新たな雇用が生まれます。
しかし日本では消費が鈍化しており、これが経済の停滞を招く要因となっています。
消費停滞の悪循環
消費者が買い控えを続けると、商品やサービスの需要が減り、企業の売上が減少します。
これにより企業はコスト削減を余儀なくされ、新規の採用が減り、場合によってはリストラが発生することもあるでしょう。
結果として労働者の所得が減少し、企業活動や経済全体の消費が落ち込むという悪循環に陥ります。
デフレ傾向の強化
消費の低迷は物価の下落(デフレ)にもつながりやすくなるため、消費者は物価が下がるのを待ち、「今買わなくても後で安くなるかもしれない」と考えて、購買を控える傾向が強まります。
こうした消費の先送りは、企業収益のさらなる低下を招き、日本経済の成長を一層鈍化させる原因となるのです。
日本で貯蓄が優先される理由
日本では長年にわたり貯蓄が美徳とされ、将来の安心のために貯蓄を重ねることが推奨されてきました。
この貯蓄志向が根付いた理由について、掘り下げてみましょう。
老後への不安と社会保障の課題
日本の年金制度は、少子高齢化の影響で財政的な持続性が危ぶまれており、将来的に年金が減額される可能性が指摘されています。
こうした不安から退職後の生活費を確保するために、貯蓄を重視する傾向が強まっています。
また、若年層を中心にFIREブームや新NISAが人気となっていることからも、「今の暮らしを豊かにしたい」というより「将来お金に困らないように、できるだけ早く資産を増やして働かずに済む生活を目指したい」という考え方が広まっているのがわかります。
安全志向と金融リテラシーの課題
日本では親世代からの教えも影響して「リスクを避けたい」という安全志向が強く、金融投資に対する心理的な抵抗が根強いです。
日本銀行は長期間にわたって「低金利政策」を実施しており、金融機関が提供する預金金利の低さにも反映されているため、銀行預金は利率が非常に低く、利息収入は極めて小さい状況です。
ですが「元本保証」があるという理由で預金にこだわる人が多く、預金だけでは資産が増えない状態が続いています。
また株式や投資信託のような、リスクを伴う投資商品に対する知識が十分でないことも、貯蓄が好まれる要因の一つです。
このような理由から、日本の多くの家庭はリスクのある投資よりも、安全な貯蓄を好んでいるのです。
まとめ
物価上昇や低金利政策に加え、長年にわたる貯蓄文化や老後への不安、金融リテラシーの不足が、家計を貯蓄志向に向かわせ、消費を抑制しています。
これらの要因が合わさり、日本経済の活力が低下するリスクをもたらしているのです。
後編では、こうした状況を打開し、経済を再生させるために「貯蓄から投資へ」シフトする必要性について詳しく探っていきます。
投資を通じて資産を増やす手段や、経済への好影響についても解説し、具体的にどう行動すべきか考えていきましょう。