複利計算と長期投資の関係を明らかにする【後編】

長期投資をする上で理解しておくべきなのが「複利効果」です。
複利効果とは、投資で得た利益を投資元本に回すことで、利益が利益を生み出す状況を作れる投資効果のことを言います。
この記事では、長期投資と複利効果について、前編よりもやや詳しい内容で解説していきます。これから資産形成に数年〜数十年に渡って向き合っていきたい人は、記事の内容を参考にしてみてください。
<関連記事> 複利計算と長期投資の関係を明らかにする【前編】
長期投資における複利の力
投資ではなく「資産形成」をしたいのであれば、できる限り投資元本を割ってしまうようなリスクを避け、安定的に資産の利益を積み上げていくような運用を目指したいところです。
リスク低減を前提にして投資と向き合っていきたいのであれば、投資商品を短期的ではなく、長期的に運用することが重要です。
過去60年における上場銘柄の投資収益を期間別にみると、投資期間が長くなればなるほど、年間収益率のブレ幅が小さくなるといったデータがあります。つまり、投資期間が長期になればなるほど、理論上は安定的に資産を増やせるということです。
そして、その長期投資とシナジー効果を生み出せるとされるのが複利効果です。
前編で解説した通り、複利効果とは「投資元本と受け取った利子」に対してさらに利子がつくことを言います。つまり、運用年数が増えれば増えるほど、投資元本そのものが膨らんでいき、結果的に単利よりも投資利益を最大化する期待が持てるということです。
長期投資における複利の力を具体的な数字で確認してみるためにも、100万円を年利回り5%で運用した時のシミュレーションを見てみましょう。
運用期間 |
単利 |
複利 |
利益の差 |
1年 |
1,050,000円 |
1,050,000円 |
0円 |
5年 |
1,250,000円 |
1,276,282円 |
26,282円 |
10年 |
1,500,000円 |
1,628,895円 |
128,895円 |
15年 |
1,750,000円 |
2,078,928円 |
328,928円 |
20年 |
2,000,000円 |
2,653,298円 |
653,298円 |
25年 |
2,250,000円 |
3,386,355円 |
1,136,355円 |
30年 |
2,500,000円 |
4,321,942円 |
1,821,942円 |
出典:大和証券
このように、同じ投資元本の場合、運用が長期になればなるほど複利の方が高い利益を生み出せることが分かります。
したがって、長期での資産形成を前提とするのであれば、複利を狙った運用一択と言えるでしょう。
複利計算におけるリスクと注意点
ここまで複利効果に対するメリットを解説してきましたが、複利計算をする上ではいくつか認識しておくべきリスクが存在します。
例えば、複利効果が雪だるま式に増えるのは、利益だけでなく損失も同様です。仮に投資商品の利回りがマイナスになると、複利が逆効果に作用してしまい、単利運用よりも損失額が大きくなるリスクが考えられます。
他にも、運用している間は実質的に投資資金を現金化できないというものも挙げられるでしょう。
複利効果は長期間運用することによって効果を最大化できるため、長期積み立ての途中で現金化するようなことがあると、利回りの状況によっては単利よりも損をする可能性が考えられます。
特にインフレによって生活品の物価が上がり続けている状況になると、途中で投資体力が尽きてしまい、結果的に長期投資×複利効果による投資メリットを享受できなくなるかもしれません。
このような複利におけるリスクをできる限り避けるためにも、長期で運用利益がプラスに転じやすいと言われている「インデックス指数」に連動した投資信託に投資したり、インフレにも耐えられるように余裕資金だけで資産形成をするといった意識を持つと良いでしょう。
また、相場の下落があっても、うろたえることなく長期積み立て投資を続けられるよう、あえて相場を見過ぎないといった、「ほったらかし投資」に意識をシフトしてみるのも一つの手です。
「お金」の長期的な運用における考え方
現代社会は、今まで以上に先の見えないカオスな状況となっています。そのため、お金を長期的に運用する上での資金計画も、以前より立てづらいと言われています。
その中で、長期運用の計画を立てるためにも、自身の資産をどのように振り分けていくかといった意識を持つと良いでしょう。
一般的に、各金融商品の選び方の基準は以下と言われています。
・現預金:必要な時にすぐに引き出せるが、金利が低くインフレに弱い
・投資信託:分散投資を手軽にできてリスクが比較的低いが、手数料がかかる
・債券:満期償還日になれば元本と利息を受け取れるが、利回りは低い
・株式:株主優待や大きなリターンを狙えるが、損失リスクも大きい
このように、投資商品ごとに特徴が異なりますので、状況に応じてリスク資産の割合を変えていき、長期的にお金を増やしていく意識を持っておくようにしてください。