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2025/06/19 09:16

デジタル証券化で変わる海外不動産投資の新常識【後編】

前編では、デジタル証券化によってもたらされる海外不動産投資の魅力、仕組み、従来の投資手法との違い、そしてメリット・デメリットについてご紹介しました。
 

前編はこちら⇒

 

後編では、より実践的な視点から日本と海外の最新動向と注目の投資先エリア、具体的な投資事例、そして実際に投資するプラットフォームの比較まで詳しく解説していきます。

 

日本における最新動向

国内でも、不動産をはじめとする資産のデジタル証券化を促進するために、「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)」という新たな資金調達・投資の仕組みが整備されつつあり、SBI証券、野村證券、三井物産デジタル・アセットマネジメントなど大手金融機関が次々と参入し、活発化しています。

従来は書面や登記といった手続きが必要でしたが、「特定受益証券発行信託」という仕組みにより投資家はシンプルでスピーディな取引が可能となり、保有資産の売却や譲渡もスムーズに行えるようになります。


 

「利益超過分配」の追い風

不動産投資では、家賃収入などの実際の利益を分配するだけでなく、減価償却費のような帳簿上の経費を活用して、キャッシュフローに余裕がある分を追加で分配する「利益超過分配」という手法がよく使われます。

これまでは、この超過部分も「配当」として課税対象になっており、投資家の実質的な利回りを押し下げる要因となっていました。

しかし、2024年12月に発表された令和7年度税制改正大綱では、この扱いが見直され、「元本の払い戻し」として非課税扱いになる方向で改正される予定です。これにより、投資家は税引き後のリターンが向上し、より効率的な資産運用が可能となります。

 

世界の最新事例と動向

海外では、日本以上にデジタル証券化の実用化が進んでいます。

アメリカ:tZEROやINXといったST専用取引所が稼働。個人投資家の参加も進んでいます。
スイス:デジタル証券に特化した不動産取引所を立ち上げ、金融とテクノロジーの融合が進行中。
シンガポール:国家レベルで規制と制度の整備が進み、アジア圏のデジタル資産市場をリードしています。

 

注目の海外投資先エリアの特徴とリスク

代表的な地域ごとの特徴とリスクを紹介します。

 

アメリカ

  • 特徴:成熟した不動産市場、高い透明性、安定した収益性
  • リスク:州ごとの法制度差、利上げによる不動産価格の変動
     

東南アジア(タイ、ベトナム、マレーシアなど)

  • 特徴:経済成長による資産価値上昇の期待、観光需要の高まり
  • リスク:不動産法制の不透明さ、外資規制
     

中東(ドバイなど)

  • 特徴:外国人の不動産所有が比較的自由、国際都市としての需要増
  • リスク:地政学的リスク、法改正リスク
     

欧州(イギリス、ドイツなど)

  • 特徴:堅実な不動産市場、インフレに強い資産としての魅力
  • リスク:EU規制、経済・通貨リスク
     

実際の投資事例

不動産STによる実績のある事例をいくつか紹介します。

 

Aspen St. Regis Resort(米国コロラド州)

2018年、高級リゾートホテルがトークン化され、1,800万ドルを調達。約19%の所有権を一般投資家に公開しました。

 

Lofty(米国)

米国の住宅物件をトークン化し、1トークン50ドルから投資可能なプラットフォームを提供。平均利回りは年間約5%で、日次配当の仕組みもあります。高利回り物件では20%を超えるものもあります。(出典元:NFT Gartors)

 

BlocHome(ルクセンブルク)

ルクセンブルクの高級住宅「CLAPTON Residence」をトークン化。1,000ユーロからの投資を可能にし、ヨーロッパ圏での安定資産へのアクセスを実現しました。

 ケネディクス(日本)

2021年に東京都渋谷区の賃貸マンションをデジタル証券化し、1口100万円からの投資を募集しました。このプロジェクトでは、発行価格総額の14億5,300万円を大きく超える申し込みがあり、年間利回りは年率3〜4%で運用されています(The Gold Online記事参照)。日本国内でのデジタル証券化の成功事例となりました。

こうした事例からも、デジタル証券化が「誰でも参加しやすい不動産投資」の新しい形として広がっていることがわかります。

 

実際に投資するには?流通プラットフォーム

現在、デジタル証券への投資は以下のような専用プラットフォームで行うのが一般的です。

 

 

それぞれのプラットフォームに特徴があるため、ご自身の投資スタイルや目的に合ったサービスを選ぶことが、安心して長く取り組むためのポイントです。

 

まとめ

デジタル証券化の進展により、これまで一部の富裕層に限られていた海外不動産投資が、誰にとっても身近な選択肢となりました。
少額からの投資、配当の自動化、法制度の整備など環境は整いつつあります。

知識と情報を備えたうえで行動すれば、これまで手が届かなかった資産形成の新しい手段を手にすることができるでしょう。

 


 

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