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2025/07/10 20:42

企業と社員の新たな資産形成支援|職場つみたてNISAとは?【後編】

前編では、職場つみたてNISAの背景や仕組み、企業・従業員それぞれのメリットとデメリットについて解説しました。後編では、iDeCoや企業型DCとの比較や、制度の課題、今後の展望について詳しく見ていきます。

 

前編はこちら≫

 

 iDeCo・企業型DCとの比較

職場つみたてNISAは、企業で広く導入されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「企業型DC(企業型確定拠出年金)」とは異なる特徴を持つ制度です。

大きな違いとして、iDeCoや企業型DCは、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税となるため、高い節税効果があります。
一方で、職場つみたてNISAは運用益や分配金こそ非課税ですが、掛金には所得控除が適用されません。

また、受取時期にも違いがあります。
iDeCoや企業型DCは老後資金専用の制度であり、原則60歳以降に「一時金」または「年金形式」で受け取る仕組みです。
対して、職場つみたてNISAは、必要なときに換金が可能なため、ライフイベントに応じた柔軟な資金活用ができる点が特長です。

さらに、職場つみたてNISAは「新NISAの非課税制度を職場経由で活用するスタイル」です。
そのため、新NISAの生涯非課税投資枠(最大1,800万円)をすでに使い切っている場合は、新たに積み立てることはできませんのでご注意ください。

 

課題と今後の改善点

職場つみたてNISAは魅力的な制度ですが、実際の普及には課題もあります。

中小企業への普及の壁

導入にあたり、管理負担や業務量の増加がネックとなる企業は少なくありません。給与天引きシステムの連携、社員対応、社内教育など、リソースが限られた環境では特にハードルが高くなります。

金融リテラシー教育の不足

制度を活用してもらうには、社員の金融リテラシー向上が不可欠です。「NISAってなに?」という基本から説明が必要な場合もあり、動画教材や社内セミナーの導入が効果的です。

商品ラインナップの改善

契約先の金融機関によっては、選べる投資信託の種類が限られていることがあります。これが満足度や参加率に影響するため、社員のニーズに合った商品を提供できる金融機関を選ぶことが重要です。

このような課題から職場つみたてNISAはまだ発展途上ですが、今後の広がりに大きな期待が寄せられています。

 

職場つみたてNISAによる将来の展望

政府は2022年11月に策定した「資産所得倍増プラン」において、7つの重点項目のひとつに「雇用者に対する資産形成の支援強化」を掲げています。これを受け、今後は税制や手続きの簡素化、さらには中小企業への導入支援策の拡充などが進められると見込まれます。

では、政府はこの施策を通じて、どのような未来像を描いているのでしょうか。

 

個人(社員)への期待

長期的な資産形成の習慣化

給与天引きで少額から無理なく積み立てられ、運用益も非課税となるため、教育資金・住宅資金・老後資金といった将来への備えがしやすくなります。

投資を「実体験」として学ぶ

職場を通じて自然と投資に触れることで、若年層の金融リテラシー向上や自助努力の意識醸成が期待されています。これは将来的な「自立した生活設計」にもつながります。
 

企業側への期待

福利厚生の強化と社員定着

制度導入は経済的ウェルビーイング(安心・安定した経済状況)の向上を後押しし、社員の定着率や仕事へのエンゲージメント向上につながるでしょう。

 将来の顧客基盤づくり(金融機関視点)

職場つみたてNISAによって投資を始めた社員が、やがて準富裕層・富裕層へと成長することで、金融機関にとっても将来の有望顧客を育てる機会になります。

日本の家計金融資産は長らく現預金に偏り、資産が十分に成長していない状況が続いてきました。政府は、「職場つみたてNISA」のような仕組みを通じて、資金を預金から投資へとシフトさせ、個人の資産成長と経済の活性化を同時に促進したいと考えています。

さらには認定アドバイザー制度の創設や企業への支援策を通じて、金融教育の普及と中小企業への導入促進も進められています。

こうした取り組みにより、投資を正しく理解し行動できる人が増えることで、国民全体の金融リテラシーの底上げ、そして経済的な自立の実現が期待されています。

 

まとめ

職場つみたてNISAは、企業と社員が共に資産形成に取り組む新たなスタイルです。節税効果こそiDeCoやDCに及ばないものの、導入のしやすさや資金の柔軟な活用といった面で高い魅力があります。

「働くこと=将来への備え」という考えが当たり前になるこれからの時代、企業が社員の未来に目を向けた支援を行うことは、信頼と共感のある職場づくりにもつながります。

ぜひこの機会に、職場つみたてNISAの導入・活用を前向きに検討してみてください。

 


 

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