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2025/07/08 21:22

企業と社員の新たな資産形成支援|職場つみたてNISAとは?【前編】

ここ数年、政府主導で「貯蓄から投資へ」の流れが加速しています。特に2024年から始まった新NISAでは、長期・積立・分散投資を促す非課税枠が大幅に拡充され、資産形成を始めやすい環境が整いました。

その一環として注目されているのが「職場つみたてNISA」です。企業が福利厚生の一環として従業員の資産形成を支援し、給与天引きで自動的に投資できる仕組みです。

本記事では、職場つみたてNISAの基本的な仕組み、企業・従業員それぞれの視点から見たメリットと課題、導入までの流れをわかりやすく解説します。

 

職場つみたてNISAとは?制度の概要と背景

金融庁は2017年10月、「職場つみたてNISA」を導入しました。これは、企業が職場という身近な環境を通じて従業員のつみたてNISA活用を支援することで、福利厚生の一環として資産形成を後押しする制度です。

この制度には以下のような特徴があります。

  • 社員の給与から直接、投資資金を天引きして積み立てられます。
  • 金融機関と企業が提携し、社員の口座開設をサポート。
  • 企業が任意で奨励金を上乗せすることも可能です。
     

従来の退職金や企業年金に依存しづらくなった今、自助努力による資産形成が重要視されています。

職場を通じてつみたてNISAを始めるこの制度は、特に初心者や若年層にとって資産形成への良い入り口となるでしょう。

 

雇用者側(企業)にとってのメリットとデメリット

職場つみたてNISAを導入することで、企業にはどのような利点や注意点があるのでしょうか。

メリット

  • 福利厚生の充実
    社員の生活や将来への備えを支援する制度として、企業の福利厚生制度を強化する要素になります。
  • 離職率の低下・エンゲージメント向上
    会社が資産形成を支援することで、定着率や仕事への満足度の向上を期待できます。
  • 採用活動での差別化
    職場つみたてNISAの導入は、福利厚生を重視する求職者に好印象を与え、採用面での差別化になるでしょう。

デメリット

  • 制度管理にかかる業務負担
    金融機関との調整や社員対応など、担当部署の業務が増える可能性があります。
  • 金融教育の必要性
    制度の理解を促すため、セミナーや動画教材など教育支援の用意が必要になるでしょう。

 

従業員(利用者)にとってのメリットとデメリット

続いて、従業員側の視点での利点や注意点を見ていきましょう。

メリット

  • 手間なく資産形成がスタートできる
    給与天引きで自動的に積立が行われるため、投資が習慣化しやすく、投資初心者でも取り組みやすいです。
  • 運用益が非課税になるメリット
    つみたてNISAの特徴である「運用益の非課税」はそのまま活用でき、長期的な資産形成に有利です。
  • 企業からの奨励金で利回りが向上する場合も
    一部の企業では、積立額に応じて奨励金やインセンティブを支給するケースもあり、実質的な利回りを高める効果があります。
    デメリット
  • 商品選択の自由度が制限されることも
    契約している金融機関によっては、選択できる投資信託が限られることがあります。
  • 心理的な「解約しづらさ」
    給与からの天引きで積立されるため、やめる際に手続きが必要で負担に感じることも。
     

 制度導入の流れと実務的ポイント

企業が職場つみたてNISAを導入する際は、次のようなステップを踏むのが一般的です。多くの金融機関がサポートを提供しており、初めてでも安心して始められます。

1.金融機関との契約・連携
証券会社などと契約し、取扱商品や手続き方法を確認します。社員は、その中から商品を選び、毎月一定額を積み立てます。
2.社内規程・制度設計の整備
対象者(正社員・契約社員など)や運用ルールを明確にし、社内規定や導入要項を整えます。これにより、運用後の混乱を未然に防ぐことができます。
3.社員への説明会・希望者の募集
制度の内容やメリットを説明し、希望者を募ります。初心者にもわかりやすい説明が重要です。
4.給与システムとの連携
給与からの天引きを行う場合、人事・経理部門との連携と給与計算システムへの設定が必要になります。
5.積立開始と定期フォローアップ
制度開始後も、社員の利用状況や運用商品の見直し、問い合わせ対応など、継続的なフォローが求められます。
最近では、金融機関が説明資料やシステム設定をサポートする「導入支援パッケージ」を提供しており、企業側の負担を軽減する取り組みも進んでいます。

 

まとめ

金融庁は、投資を始めるきっかけを「身近な場」で得られることが重要だとしています。職場つみたてNISAはまさにその考えに沿った制度で、企業は人材確保に、従業員は資産形成の第一歩に活用できます。

後編では、確定拠出年金(DC)との違いや、制度の課題や今後の展望について詳しく解説していきます。

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