金融経済教育推進機構の役割と重要性【後編】

日本は世界の中でも投資に消極的な国と言われています。それは、旧来から日本円の価値が比較的安定していたという面もありますが、金融教育が十分にされてこなかったからという見方もあります。
実際に諸外国に比べて日本の金融教育は遅れているという指摘もあります。そんな中、政府は日本国民に積極的な投資を促す意味をこめて、2024年4月から金融経済教育推進機構を設立しました。
今回は後編ということで、金融経済教育推進機構を理解する上で知っておきたい法律周りの知識や、機構が提供するサービスの活用法について解説します。
法律と規制の理解
金融教育においては、関連する法律を理解することが重要です。
例えば、金融教育では「投資」についての分野がありますが、金融商品は金融商品取引法に則って運用・販売されているため、金融教育者はその法律のことをある程度知っておかないと、そもそも正しい知識を教えることができません。
日本の金融関連の法律には、以下のようなものがあります。
金融商品取引法 | 投資家を保護することを目的とし、有価証券や先物取引におけるルールを定めている |
金融サービス法 | 消費者保護の強化を目的とし、預貯金・株式・保険・共済など金融商品の販売に関わる業者のルールを定めている |
金融制度改革法 | 銀行や証券会社、信託会社の業務分野の規制緩和を行い、相互参入などを認める改革を行っている |
犯罪収益移転防止法 | 国際的なマネーロンダリングやテロ資金対策のためのルールを定めている |
銀行法 | 銀行を利用する預金者の保護を目的とし、銀行業に関する幅広いルールを定めている |
保険業法 | 保険契約者の保護を目的とし、保険業を営む事業者の健全な運営や公正さを守るルールを定めている |
信託業法 | 信託業を営む会社の適切なルールを定めている |
資産形成においては、投資や預金、保険などさまざまな手法の活用を検討することになりますが、それぞれに法律が定められているという点が特徴です。
このように日本では金融商品に関するさまざまな法律が定められていますので、金融教育をする側は関連法規の理解が重要になってくるわけですが、金融経済教育推進機構で認定している「認定アドバイザー」はどの程度の法律理解をしているのでしょうか。
認定アドバイザー制度の重要性
認定アドバイザーは、金融経済教育推進機構が認定する金融教育者の名称であり、機構のホームページから誰でも申込みをすることができます。
ただし、認定を受けるためには書類選考と面接に通過しなければならず、そのためにもいくつか設定されている認定要件を満たす必要があります。
認定要件の中でも特に目を引くのが、「金融商品やサービスに関する有益な資格と実務経験を有している必要があること」が挙げられます。実質的にこの要件を持って、金融教育をする上での法律理解があることを担保していると理解できます。
また、認定アドバイザーになった上で、所定の審査に合格することにより、初めて金融経済教育推進機構の講師や相談員として活動できるようになることから、認定アドバイザーとして金融教育をする上では、極めて高い金融知識を持っている必要があると言えます。
なお、認定アドバイザーとして活用していく上ではさまざまなポリシーやスタンスが明記されていますが、特に重視されているのが「中立な立場で金融アドバイスができること」となっています。
特定の金融商品や銘柄を勧めるのではなく、あくまでも正しい金融知識をアドバイスするとともに、相談者が自分の意思で資産形成を進められるように促す存在が、金融経済教育推進機構の認定アドバイザーの役割であると同時に、責任と言えます。
eラーニングとデジタル教育
資産形成を考えている一般個人に向けて、金融経済教育推進機構はeラーニング教材やセミナーを提供しています。
いずれも金融経済教育推進機構のホームページから誰でも確認できるようになっていますので、興味のある分野の教材を確認してみると良いでしょう。
また、セミナーについてはオンラインだけでなく各エリアで開催するオフライン開催も多いのが特徴です。中には親子で学ぶことを目的としたセミナーもありますので、家族で金融リテラシーを高められるのもポイントです。
既成のセミナーだけでなく、認定アドバイザーによる出張講義に申し込むことも可能です。年末年始を除く全ての日において、最長120分の講義を派遣料無料で申込することができます。
今後は小学校を始めとした金融機関や、地方自治体が実施するイベントでも金融経済教育推進機構の認定アドバイザーが講義を行い、全国的に金融リテラシーが高まっていく未来も想像できるでしょう。