プライベートアセットとは?いま注目される「未公開資産」【前編】

これまで金融の世界では、上場株式や債券など、公開市場で売買される資産が主流でした。
しかし、世界的な低金利やインフレ環境に加え、投資ニーズの多様化により、上場していない資産「プライベートアセット」が新たな投資の選択肢として注目を集めています。
本記事の前編では、プライベートアセットとは何か、その注目の理由、具体的な種類、メリット・デメリットなど、基本的な内容を分かりやすく解説します。
プライベートアセット(未公開資産)とは?
プライベートアセットとは、証券取引所などの公開市場に上場していない資産の総称です。
一方、上場株式や国債などの誰でも市場を通じて取引可能な資産は「パブリックアセット(公開資産)」と呼ばれ、取引の透明性が高く換金性も高い点が特徴です。
かつては機関投資家だけの領域だった
未公開資産は長年にわたって機関投資家向けの資産とされてきました。
理由として専門知識の必要性が高いことや、数千万円〜億単位の投資規模、長期間資金を拘束されすぐに現金化することが難しいなど、個人投資家にはハードルが高かったためです。
しかし、昨今は個人でも投資可能な公募型のプライベートアセットファンドが登場し、複数の投資先に分散できるようになったため、資産形成手段の一つとして一般化しつつあります。
なぜ今、注目されているのか?
世界的に長く続く低金利に加え、インフレによる実質資産の目減りが深刻化しています。そのため、預金や債券に代わる長期的な成長資産として、プライベートアセットへの関心が高まっています。
世界ではすでに主流
米国の年金基金や大学基金では、資産の3〜5割をプライベートアセットに配分しているケースも少なくありません。
また、世界のプライベートエクイティ市場は、2014年末から2024年秋までの約10年間で3.6倍に成長し、同期間のS&P500種株価指数(3.3倍)を上回る実績を記録しています。(S&P Dow Jones Indices の「S&P 500 Total Return」レポート参照。)
こうした実績が信頼性を高め、日本でも富裕層を中心に投資が広がりつつあります。
日本国内でも制度面で追い風
2023年に非上場株式の評価方法のルールが変更され、従来は難しかった非公開株式のファンドへの組み入れが可能となりました。 さらに新NISA制度の改定、スタートアップ支援政策やユニコーン企業への資金供給促進など、国の取り組みによって個人投資家が成長企業に間接的に投資する機会も増えています。
プライベートアセットの主な種類
大きく分けて5つに分類されます。
プライベートエクイティ(PE)
未上場企業の株式に投資し、企業成長後にIPO(上場)や売却によって利益を得る投資手法です。
主に以下の2種類に分かれます。
・ベンチャーキャピタル(VC):スタートアップ企業に投資し、急成長によるキャピタルゲインを狙う。
・バイアウト投資:成熟企業を買収し、経営改革などによって企業価値を高めた後に再上場や売却を行う。
プライベートデット(非上場債権)
ファンドや機関投資家が企業に対して直接貸し付けを行うタイプの投資です。
銀行融資よりも金利が高く設定されることが多く、高いインカム収入が期待できる一方で、回収までに時間がかかる点に注意が必要です。
不動産(非上場REITなど)
市場で売買されない、非公開の不動産ファンドへの投資です。
オフィスビル、物流施設、ホテルなど多様な資産が対象となり、インフレ耐性がある資産としても注目されています。
インフラ投資
道路、発電所、水道施設といった社会インフラへの投資です。安定した収益を生みやすく、長期保有に適した資産とされています。
その他(アート・ワイン・森林など)
アート作品、森林、ワインなどの実物資産も一部で注目されており、ポートフォリオの分散効果を高める手段として位置づけられています。
プライベートアセットのメリットとデメリット
メリット
- 長期的に高いリターンが期待できる(例:PE投資はS&P500を上回る実績)
- 市場の短期変動に左右されにくい(低ボラティリティ)
- 資産全体の分散投資効果を高められる
- 差別化された投資機会にアクセス可能
デメリット
- 流動性が極めて低い(売却には数ヶ月を要するケースも)
- 情報開示が限られ、投資判断が難しい
- 解約や資金回収に制約がある(年4回しか解約できないなど、柔軟性に欠ける)
- 市場のタイミングを見極めにくい
- 継続的な投資が推奨される
まとめ
今回は、プライベートアセットとは何か?という基礎知識を中心に解説しました。
今後の資産形成を考えるうえでは、上場資産だけに頼らない視点が求められています。
後編では 実際に投資できる商品や仕組み、注意点、今後の市場展望などを詳しく紹介していきます。
プライベートアセットの世界をもっと深く知り、資産形成の可能性を広げていきましょう!