ファイナンシャル・ウェルビーイングとは？幸せを決める新たなお金の指標
現代における「豊かさ」とは、もはや単なる収入や貯金の多さだけでは語れません。
それを測る新たな指標として注目を集めているのが「ファイナンシャル・ウェルビーイング（経済的健全性）」です。
これは個人や地域、組織が「お金との関係」を見つめ直し、心からの安心と納得感をもって生きていくための軸となる考え方です。
お金があるのになぜ幸せじゃないのか、私たちはどうすれば幸福になれるのか。
そんな問いの答えを探るヒントとして、ファイナンシャル・ウェルビーイングを一緒に理解してみましょう。
幸せに「お金」はどれほど関係あるのか？
2007年以降、OECD（経済協力開発機構）や国連の主導で、「Beyond GDP（GDPを超えて）」という国際的な動きが本格化しています。
これは、GDPといった金銭的な指標だけでは測れない人々の認知に基づく幸福や豊かさ、さらに持続可能性を含めてより多面的に評価し、政策に反映させようという取り組みです。
その流れの中で、2010年に米Gallup社がウェルビーイングを構成する5つの要素のひとつとして初めて「ファイナンシャル・ウェルビーイング（FWB）」を発表しました。
以来、特にアメリカの金融業界を中心に積極的な研究が進み、お金の「使い方」や「感じ方」までもが幸福度と密接に関わっていることが明らかになってきています。
日本でも、金融庁が「2023事務年度 金融行政方針」にてFWBの重要性を明言しており、今後さらにこの分野の議論が広がっていくことが期待されています。
また、金融リテラシーが高いほどファイナンシャル・ウェルビーイングも高くなる傾向が示されていることから、日本政府は金融経済教育を受けた人の割合を、2028年までに現状の7％からアメリカ並みの20％へ引き上げる方針を掲げています。
幸福度ランキングから見る、日本のファイナンシャル・ウェルビーイング
国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク（SDSN）が発表した2025年の報告によると、2022～2024年の3年平均で見た世界幸福度ランキングでは、フィンランドが8年連続の1位。続いてデンマーク、アイスランドと北欧諸国が上位を占めています。
一方、日本は147か国中55位にとどまりました。
この差の背景には、各国におけるFWBのとらえ方の違いがあると考えられます。
各国のFWBの定義
アメリカの消費者金融保護局（CFPB）：「現在および将来の経済的債務を十分に果たすことができ、将来の経済状況に安心感を持ち、人生を楽しむ選択ができる状態」と定義。
イギリスの金融年金サービス局：「安心感があり、自分の経済をコントロールできていると感じること。日々の支払いができ、不測の事態にも対応でき、健全な将来への軌道に乗っているという認識を持てる状態」と説明。
日本の金融庁： 「自らの経済状況を管理し、必要な選択を行うことで、現在および将来にわたって、多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態」と定義。
いずれの定義でも、現在と将来の両面にわたって経済的な安心感を持ち、自らの選択によって人生を主体的に歩める状態であるとされています。
日本におけるFWBの特性
日本においては、FWBに影響を与える要素として「家計満足度」や「人生選択の自由度」といった主観的な評価が強く関わっていることが同調査で示されています。
一方で、「地域性（大都市ほど高い）」「最終学歴」「婚姻状態」「世帯年収」といった客観的な要因との関連も見られました。
このように、FWBとは単なる経済指標ではなく、 今の自分の経済状況に納得できているか。未来に安心感を持てるか。といった、時間軸を含む精神的な豊かさによって大きく左右されるのです。
ファイナンシャル・ウェルビーイングを高めるには？
では、私たち一人ひとりにできることは何でしょうか。
まず基本として、着実な貯蓄の積み上げや住宅ローンの返済など、日々の家計をしっかりとコントロールすることが挙げられます。
さらに、予測不能な事態に備えるための貯蓄や保険といった予備資金の確保も欠かせません。
しかしそれ以上に大切なのは、自分の夢や目標に向かって自分だけのライフデザインを描き、行動に移すことです。
目標に向けて歩んでいる実感があるだけで、たとえ今すぐ資産が増えなくても、人は豊かさを感じられるものです。
つまり「未来の自分を信じて前へ進んでいる実感」こそが、真のファイナンシャル・ウェルビーイングにつながるのです。
まとめ
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、経済的な安心感と心の充実を感じながら、自分らしい人生を歩める状態のことです。
お金に振り回されず、自分の意思で未来を選び取るために、 今こそ自分自身のウェルビーイングを見つめ直してみませんか？
共有する
