相続登記の義務化とは?今すぐ知っておきたい登記手続きの詳細

2024年4月から、相続登記の義務化が正式にスタートしました。
相続登記の義務化が始まってから約半年が経過しましたが、まだ多くの方がその具体的な内容や手続きについて、十分に理解していないのが現状です。
相続登記の義務化の背景とその内容、手続きの詳細について分かりやすく解説します。
相続登記の義務化の背景
相続登記の義務化が導入された背景には、大きく分けて2つの問題があります。
1.相続登記の未実施による問題
これまでの制度では、相続が発生しても相続登記を行うかどうかは、相続人の判断に委ねられていました。
その結果、国土交通省「所有者不明土地に関する調査報告(2021年)」によると所有者不明土地の総面積は約410万ヘクタールに達すると推定されており、これは九州地方全域の約1.2倍に相当します。
これにより、公共事業や民間の開発プロジェクトが遅延するなど、経済や社会に対して深刻な影響を与えていました。
2.相続手続きの複雑さと負担
相続は家族の死後に行われるため、感情的な負担も大きいものです。
特に相続登記は遺産の分割や相続税の計算、法的・財政的な問題以外にも、不動産に関する法律知識が求められるため、相続人が手続きを後回しにする傾向がありました。
このような背景から、国は相続登記を義務化することで土地の所有者を明確にし、土地の適正な利用と管理を促進しようとしています。
相続登記義務化の内容
相続登記義務の対象と登記の期限、義務違反への罰則について解説します。
義務化の対象
相続や遺贈によって、不動産を取得したすべての相続人が対象となるため、家や土地などの不動産を相続した場合、例外なく登記手続きを行う必要があります。
また相続する不動産が複数の場合、それぞれについて登記を行う義務があります。
登記の期限
所有者不明土地の増加を防止するために、相続が発生してから3年以内と定められました。
相続登記を放置し相続関係が複雑になってしまうと、取得する戸籍謄本の通数が増えたり、手続き報酬がより高額になる可能性があります。
相続登記義務違反への罰則
期限内に相続登記を行わなかった場合、相続人に対して10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。
相続登記の手続きの詳細
相続登記を行う際には、いくつかの手順と必要書類があります。具体的には以下のようなステップで進めます。
1.相続の開始を確認…死亡届を提出し、戸籍謄本や住民票の除票を取得して、正式に相続手続きを進めます。
2.相続人を確定する…被相続人が亡くなった時点での戸籍謄本を遡り、すべての法定相続人を確定します。
3.遺産分割協議書の作成…遺産分割協議書を作成すると、相続不動産の所有権がどの相続人に移転するかが正式に決まります。そのためには、相続人全員の合意と、全員分の署名捺印が求められます。
4.必要書類の準備…以下が相続登記を行うための主な書類です。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本および除籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本および不動産を取得する方の住民票
・遺産分割協議書(相続人が複数の場合)
・登記申請書
状況により必要な書類が異なるので、必ず司法書士や法務局に確認しましょう。
5.登記申請の提出…不動産がある地域の法務局に登記申請を行います。申請が受理されると登記が完了し、正式に不動産の所有権が相続人に移転します。このプロセス完了までが、相続登記の義務となります。
相続登記義務化による負担と対策
所有者不明の土地が、経済や社会に深刻な影響を与えているとはいえ、義務化によって相続人に大きな負担がのしかかる状況になりました。
義務化による負担と対策について、考察しておきましょう。
相続登記義務化による負担
相続人になった際、2つの負担が考えられます。
費用負担
登記には費用が発生します。特に、複数の不動産を相続する場合や、共有持分の登記が発生する場合は費用も増大します。
相続登記にかかる費用の例
●登録免許税…土地建物の固定資産税評価額に対して0.4%。(評価額が100万円以下の場合は免除される可能性がある。)
●司法書士への登記申請報酬
●戸籍謄本
●全部事項証明書
手続きや時間への負担
相続登記の手続きは法務局で行うため、平日の開庁時間に出向く必要があり、仕事で時間がとれず、先延ばしにしてしまうケースが多くみられます。
また音信不通や疎遠の相続人がいる場合、家裁への申立書の作成や、法的な知識や書類の準備が必要です。
弁護士や司法書士などの、専門家に依頼することも検討しましょう。
義務化に備えた対策
相続登記は、不動産を取得した相続人からの依頼がなければ申請することができないため、自分が亡くなったときに備えて、あらかじめ司法書士に依頼はできません。
ただし生前に不動産を贈与したり、遺言書を作成して不動産を引き継ぐ人を決めておくことはできます。
不動産の相続に不安がある場合、一度司法書士や弁護士に相談しておくのもよいでしょう。
まとめ
相続登記の義務化が始まり半年が経過しましたが、相続人にとってはまだ新しい制度であり、多くの不安や疑問は拭えません。
相続登記を進める際には適切な情報収集や、必要時に専門家の力を借りながら、速やかに相続登記を行いましょう。