日銀が進めるデジタル円の実証実験の最新情報を解説

今や我々の生活に根付いているキャッシュレス決済。財布を持ち歩くことがなくなってしまったような人も多いのではないでしょうか?
お金のデジタル化は民間企業だけでなく、国を挙げて取り組まれています。特に日銀が進める「デジタル円」は、今後日本国民に大きな影響を与える可能性があると考えられます。
そこで今回は、日銀が進める「デジタル円」とはなんなのか。また、既存の電子マネーなどとの違いはなんなのかについて解説します。
日銀が進めるデジタル円とは
日銀が検討を進めているデジタル円は、ホームページにて以下のように定められています。
- デジタル化されていること
- 円などの法定通貨建てであること
- 中央銀行の債務として発行されること
一般的にPayPayなどに代表されるキャッシュレス決済は、デジタル円に近いものの、加盟店でなければ利用ができないことや、一度の支払い・チャージに上限額が設定されているなど、現金と全く同じように使うことはできないといった特徴があります。
一方、デジタル円は文字通り現金のデジタル化がなされたものであり、既存のキャッシュレス決済と異なり、場所も時間も制限されることなく、まるで現金と同じように使えるといった思想上の違いがあります。
現在、日本円を印刷・発行を行う主体は日銀となっています。デジタル円は中央銀行の債務、つまり現金と同じように供給することを前提としているため、その導入は日銀が設計を進めています。
具体的にいつからの導入を目指すかは明言されていません。また、日本だけでなく諸外国でもデジタル通貨の検討が進められている状況です。
デジタル円の実証実験の概要
デジタル円の導入は日本国民、ひいては世界に影響をもたらしうる施策ということもあり、「パイロット実験」と呼ばれる実証実験が2023年4月から行われています。
実証実験と言っても、現時点では具体的なエリア・店舗でデジタル円が使えるようになっているなど、実戦投入がされているわけではありません。
現在は実験用システムの構築と、リテール決済に関する技術や実務の経験者を交えた会議による妥当性や将来性についての議論が行われている状況です。
特に後者については、金融機関やスタートアップ含む一般事業者などの計64社が参加(2024年3月時点)し、多角的な議論が進められています。
今後も実践投入に向けたシステム構築や議論が進められる予定ですが、そもそもデジタル円を導入するかどうかすらも決まっていません。そのため、将来の利用者となりうる我々は、そもそものキャッシュレス決済に慣れておく程度の心構えをしておけばよいと言えます。
IT技術とデジタル円の関係
今日まで利用者を増やし続けているPayPayなどの電子マネーは、あくまでも既存の現金を電子化しただけにすぎず、国が発行している法定通貨そのものではないという整理になります。
運営自体もそれぞれの電子マネー運営会社が運営しているため、サービスごとにサーバーが異なったり、メンテナンスの頻度やタイミングが違うといった特徴が見られます。
その点、デジタル円は中央政府が一括して運営するものになります。思想上は現金と全く同じように利用できると言われていますので、もしデジタル円が実現したら我々の生活は大きく変わることになるでしょう。
給料は全てデジタル円で支給され、銀行口座という概念がなくなる未来があると唱える専門家も見られます。
ちなみに、似たような概念に仮想通貨(暗号資産)があります。
円や米ドルなどと異なり、独自の通貨単位を持つ仮想通貨は、どこかの国の中央銀行が発行しているものではありませんので、その通貨の価値を保障するものではありません。
デジタル円に限らず、我々が現金のように使えているものを整理する際は、「どこの母体が発行している通貨が大元になっているものか」を考えると、分かりやすく考えられるでしょう。
デジタル円導入に向けた金融政策
デジタル円導入によって見込まれるメリットとしては、大きく以下の3つだと言われています。
- 手数料の支払いをすることなく送金できる
- 決済代行会社との契約が不要になる
- 利用上の制限を受けることなく現金と同じように利用できる
ただ、デジタル円は利便性が高い一方で、特に検討しなければならないリスクがあります。それは、マネーロンダリングへの不正利用やプライバシー侵害のおそれです。
特に後者は、お金の流れが全て記録されるようになることから、一企業に膨大な利用履歴が保有されることになります。
日銀がデジタル円を導入する際は、技術的観点だけでなく、情報セキュリティや倫理、経済政策への影響などあらゆる観点を検討する必要がありますが、実装された際は上手く活用できるよう、日頃から情報収集をしておくと良いでしょう。