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makeA事務局
2025/10/02 09:28

デジタル地域通貨の広がりと未来

デジタル地域通貨とは、特定の自治体や商店街などの一定の範囲に限定して流通する電子的な通貨です。

従来の「地域商品券」や「地域通貨」をデジタル化し、スマートフォンアプリやICカードを通じて利用できるようにした仕組みであり、QRコード決済や専用アプリを通じて簡単に支払いができます。

そのため現金を持ち歩く必要がなくなり、利用者にとって大きな利便性の向上となりました。

こうしたデジタル地域通貨の導入は、単なるキャッシュレス推進にとどまらず、地域経済や社会のあり方そのものに影響を与えつつあります。

デジタル地域通貨の導入目的やメリット、そして今後注目されていくだろう「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」との関わりについて見ていきましょう。

 

導入の目的

 

デジタル地域通貨導入の一番の目的は、地域経済の活性化と地域内消費の循環促進です。大手チェーンやインターネット通販に流れがちな消費を、地域の商店やサービスに向ける仕組みとして期待されています。

また、多くの自治体では「プレミアム付き」として発行し、1万円で購入すれば1万1千円分利用可能といった形で、地元消費を後押ししています。

こうした仕組みは、地域消費を喚起する強力なツールとして機能しているのです。

 

利用するメリット

 

様々な立場から、受け取れるメリットを見てみましょう。

 

住民にとってのメリット

 

利便性・お得感:現金不要でスマホ決済でき、残高確認や履歴管理もアプリで簡単。さらに期間限定の還元やチャージボーナスもあり、お得に利用できます。

行政サービスとの連携:災害時の給付金や子育て支援の配布手段としても利用でき、スムーズな給付が可能です。
注意点:「地域のためのお金」という性質が強いため、他地域やオンラインでは使えない場合が多く、旅行者や外部利用者にはやや不便です。

 

店舗・商店街にとってのメリット

 

  • 地域内循環:利用範囲が限定されるため、お金が地域外へ流出しにくくなります。
  • 新規顧客獲得:決済データを活用することで顧客分析や販促が可能になり、普段訪れない店舗への来店機会も増えます。結果として新規顧客の獲得やリピーター増加につながり、商店街全体の活性化を促します。

 

自治体にとってのメリット

 

コスト削減とデータ活用:紙の発行や換金コストを抑えつつ、利用状況を把握し、政策立案や商業戦略に反映できます。

 

  • 地域の魅力発信:農産物や伝統工芸品など「地域ならではの商品」への消費を後押しし、観光振興にもつながります。
  • 住民参加の促進:ボランティアや防災活動に報酬として地域通貨を活用すれば、住民の参加意識を高める効果も期待できます。
     

中央銀行デジタル通貨(CBDC)と日本の動き

 

地域通貨と並行して注目されているのが、中央銀行が発行するデジタル通貨「CBDC(Central Bank Digital Currency)」です。

日本銀行も「デジタル通貨」の実証実験を進めており、将来的には現金に代わる新たな基盤インフラとなる可能性が期待されています。

今後はCBDCを基盤としつつ、地域に特化した「デジタル地域通貨」が共存する形も想定されるでしょう。

 

CBDCの特徴

 

  • 中央銀行発行:中央銀行の債務として発行される高い信頼性。
  • デジタル提供:紙幣や硬貨のような物理的形態を持たず、完全に電子化。
  • 法定通貨建て:円やドルといった法定通貨を基盤とする
  • 誰でも使える決済手段:現金や民間決済を補完するユニバーサルな決済手段
     

導入の背景とメリット

 

CBDC導入の背景には新しい情報技術を活用し、より迅速で安全な決済システムを構築する狙いがあります。
「公共財」としての性格を持つため、電子マネーのような決済手数料(通常2〜5%程度)が発生しない可能性が高いとされ、店舗にとっても大きな利点となります。

さらに日本の財務省によると、令和4年度における貨幣製造の予算は約170億円にのぼりました。CBDC導入により、現金発行に伴う物理的コストも削減できるでしょう。

 

日本と世界の動き

 

日本:現時点で発行計画はないが、実証実験を通じて制度設計を検討中。
EU:調査フェーズを終え、2023年から準備フェーズへ。
アメリカ:プライバシーやセキュリティへの懸念が強く慎重姿勢。

中国:デジタル人民元の実証実験を拡大。
新興国:カンボジア、バハマ、ナイジェリアなどでは既にCBDCを発行。

 

まとめ

 

デジタル化によって、印刷や配布、換金といった従来の作業が不要となり、地域通貨の導入・運用コストは大幅に削減されました。さらにスマートフォン普及も追い風となり、利用者拡大が進んでいます。

今後もデジタル地域通貨は、地域経済を活性化させると同時に、住民サービスの質を高める有力なツールです。

そして今後CBDCとの共存・連携が進めば、日本のお金のあり方は新しい段階へと進化していくでしょう。

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