地価上昇2.7%の背景とは? 不動産市場と投資戦略を徹底解説【前編】

2025年3月に国土交通省が発表した公示地価は、全国平均で2.7%の上昇し、不動産市場の活況を反映しました。
今年は東京、大阪、名古屋といった大都市圏だけでなく、地方都市や観光地でも地価上昇が見られた点が特徴です。
ではそもそも公示地価とは何か? そして、なぜこれほど注目されるのか?
本記事の前編では公示地価の仕組みと、今回の上昇の背景について詳しく解説します。
公示地価がなぜ注目されるのか?
公示地価とは?
公示地価とは、国土交通省が毎年1月1日時点の土地価格を調査し、3月に発表する指標です。全国約26,000地点の標準地が対象となり、不動産鑑定士が評価を行います。
公示地価は、不動産市場の「基準価格」として広く活用されており、以下のような場面で重要な指標となります。
- 不動産取引の指標:土地の売買価格の目安となる
- 税金の計算基準:固定資産税や相続税の算出に影響する
- 都市計画・開発の基準:再開発やインフラ整備の参考となる
- 金融機関の担保評価:住宅ローンや融資の際の基準価格となる
また、公示地価と似た指標として「基準地価・路線価・実勢価格」などがあります。
- 基準地価(都道府県が発表):7月1日時点の地価を評価
- 路線価(国税庁が発表):相続税や贈与税の計算に使われる
- 実勢価格(市場価格):実際に売買された価格
公示地価は公的なデータでありながら、市場価格と比較的近い数値となるため、不動産市場を知るうえで最も重要な指標とされています。
なぜ公示地価が上昇したのか?
2025年の公示地価が全国平均2.7%上昇となった背景には、いくつかの要因があります。
円安による海外マネーの流入
2024年の不動産投資額のうち海外投資家による購入額は約1兆円となり、前年から7割増となりました。
また、米ドル換算の2024年不動産投資額(国別ランキング)では、日本は米国・英国に次ぐ3位、都市別では東京がニューヨークに次ぐ2位でした。(出典:JLL Japan不動産投資)
日本円の長期的な円安基調が続く中で、日本の不動産は「割安」に映り、外国人投資家の積極的な購入が加速しています。
主な海外投資家の動向
- 中国やシンガポールの富裕層:都心部やリゾート地の高級物件を購入
- 欧米の機関投資家:東京や大阪のオフィスビル、ホテルへの投資を拡大
- 東南アジアの企業:日本市場の安定性を評価し、長期的な資産運用として注目
住宅地の公示地価上昇率トップは、北海道富良野市の31.3%で2年連続。2位は長野県白馬村の29.6%、3位は沖縄県宮古島市の23.1%となりました。
いずれも観光地で外国人向けの別荘需要が増加したため、不動産価格が大幅に上昇したといえます。
インフラ整備や再開発の影響
都市部では大規模な再開発プロジェクトが進行しており、これが公示地価を引き上げています。
- 東京・八重洲エリア:リニア中央新幹線の開通を見据え、オフィス・商業施設の建設が進む
- 大阪・梅田エリア:万博やIR(統合型リゾート)の計画により、投資が活発化
- 名古屋駅周辺:リニア開業による経済効果が期待される
再開発による利便性の向上が投資家の注目を集め、地価の上昇につながっています。
リモートワーク定着と居住ニーズの変化
コロナ禍以降リモートワークが一般化したことで、住環境の良いエリアへの需要が高まりました。
- 郊外の人気上昇:東京都心よりも横浜、埼玉、千葉などのベッドタウンの地価が上昇。(千葉県流山市や兵庫県明石市などは、子育て政策が充実していることで流入人口が増加。)
- 地方都市の活況:福岡、札幌、金沢などは移住希望者が増え、地価が上昇。
都心から離れても快適に働ける環境が整ったことで、不動産の価値が見直されています。
地価上昇は本当に良いことなのか?
地価が上昇することは、必ずしも良いことばかりではありません。メリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
資産価値の向上:既に不動産を所有している人にとっては、大きな利益となる。
売却益のチャンス:今後さらに上昇する可能性があるため、出口戦略を考えやすい。
経済活性化:建設業や不動産業が潤い、景気の刺激につながる。
デメリット
新規投資家の参入が困難:価格が高騰し、利回りの良い物件が減少。
住宅取得の負担増加:マイホームを購入しづらくなる。
固定資産税の負担増:所有者にとっては税負担が大きくなる。
まとめ
2025年の公示地価は全国平均で2.7%上昇し、不動産市場の活況を示しました。
しかしこれは単なるバブルなのか、まだ上昇余地があるのかを見極める必要があります。
後編の記事では、この地価公地上昇を受けて今後の不動産市場の動向と、どのような戦略を取るべきかについて詳しく解説します。引き続きお楽しみに!