
これまで暗号資産には、最大55%という重い税率が課されてきました。
しかし政府・与党は方針を転換し、暗号資産を株式や投資信託と同じ金融商品として扱う方向を固めています。
2025年11月16日の朝日新聞などの報道によれば、金融庁は国内取引所で扱われる105銘柄を金商法上の金融商品に位置づけ、税制も一律20.315%の申告分離課税へ移行する見通しです。
ただし、この変更がすべての人に有利とは限りません。
その裏側には、厳しい銘柄選別と新たな課税ルールがあります。
「分離課税」の適用条件と対象銘柄
今回の改正でまず押さえておくべきなのは、「すべての暗号資産が分離課税の対象になるわけではない」 という点です。
分離課税の対象となる「特定暗号資産」
改正案では、分離課税の対象を「特定暗号資産」に限定し、
- 登録済みの暗号資産取引業者が仲介
- 金融庁の登録簿に記載された銘柄
という条件を満たす必要があります。
報道で言及されている「105銘柄」とは、現在国内取引所で扱われている ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの主要銘柄を指すと考えられています。
分離課税の対象となる取引
対象となる取引範囲は、想像以上に広いです。
- 暗号資産の譲渡所得(現物取引)
- 暗号資産デリバティブ取引(レバレッジ取引など)
- 特定暗号資産を投資対象とする投資信託(暗号資産ETF)
特に注目されているのが、これまで日本では認められてこなかった暗号資産ETFを、一般の株式や投資信託と同じ枠組みに含める方向で検討している点です。
将来的には、NISA枠で暗号資産に投資できる可能性もあるかもしれません。
予定されている「分離課税」の中身
今回の改正の軸は、暗号資産による所得を「申告分離課税」 に切り替え、税率を固定することです。
① 税率は一律20.315%
これまでの総合課税では、所得が増えるほど税率も上がり、最高で55%に達していました。
改正後は、所得の大小にかかわらず、
所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%
に統一される見込みです。
② 損失の繰越控除が可能に
今回の改正で、特に評価されているポイントです。
株式と同じように、ある年に出した損失を翌年以降(最大3年間想定)の利益と相殺できるようになります。
たとえば1年目の100万円の損失を、翌年の100万円の利益と帳消し、課税をゼロにできます。
③ 損益通算の広がり
暗号資産同士の損益通算はもちろん、株式や投資信託との通算がどこまで認められるかが注目ポイントです。
もし株の赤字を暗号資産の黒字で相殺できるようになれば、資産運用全体の効率は大きく変わります。
総合課税に残る資産と厳しい扱い
一方で105銘柄に含まれない草コインや、海外取引所でしか扱われていない銘柄、NFTなどは引き続き雑所得・総合課税になる可能性が高いと見られています。
分離課税の対象外となる資産には、以下のような制限があります。
- 譲渡所得の特別控除(50万円)が使えない。
- 長期保有による1/2課税が適用されない。
- 他の所得との損益通算ができない。
つまり、「国が認めた105銘柄以外は、これまで以上に厳しく扱う」という強いメッセージでもあります。
所得水準によって変わる影響の大きさ
分離課税は一見「減税」に見えますが、影響は人によって大きく異なります。
税制上のメリットが大きい層(高所得者)
年収900万円以上など、高い税率が適用されていた層にとっては、最大55%から20.315%への引き下げは大きな変化です。
手取りが増え、投資環境は改善します。
注意が必要な層(低所得者・扶養内)
これまで税率15%で済んでいた人にとっては、実質的に増税となるケースがあります。
また分離課税を選択すると、その利益は合計所得金額に算入されます。
その結果、
- 配偶者控除や扶養から外れる。
- 健康保険料が増える。
といった影響が生じる可能性があります。
過去に利益確定した投資家
今回の改正は 遡及適用されません。2025年までに確定した利益には、従来どおり最大55%の税率が適用されます。
いつから適用されるのか?
適用開始日は「金商法改正の施行日の属する年の翌年1月1日」とされています。
仮に2026年中に法改正が成立した場合、最短でも2027年1月1日以降の取引からの適用です。
そのため、2026年中の利益確定は総合課税となる可能性が高く、売却時期の判断には注意が必要です。
まとめ
今回の税制改正は、暗号資産を「正式な投資商品」と位置づける大きな転換点です。
ただし、取引所の選択や銘柄、出口戦略によって結果は大きく変わります。
この制度を追い風にできる人もいれば、調整が必要な人もいますが、日本のデジタル資産市場の競争力を押し上げる一手であることは確かです。
暗号資産は、個人の資産形成の選択肢として本格的に認められつつあります。