連続増配株に投資するメリットとリスクを考える

「連続増配株」とは、文字通り連続して配当を増やし続ける株の銘柄のことを言います。
上場株式を保有することで、銘柄によって保有株数に対し配当金を受け取ることができるわけですが、その配当金が増え続けることは投資をする株主に取って嬉しいメリットしかないように思えます。
しかし、連続増配株については魅力やメリットだけでなく、いくつか留意しておかなければならないリスクが存在します。
今回は連続増配株に投資するメリットと、そのリスクについて理解を深めておきましょう。
連続増配株の魅力とは?
そもそも株式投資における「配当金」は、企業の利益から支払われることになります。
したがって、大幅に減益してしまったり、新規事業への投資に注力するなどの何らかの理由で資金が不足している企業の銘柄では、配当金は減額されたり、場合によってはゼロになることがあります。
その観点から考えると、連続増配株である企業は安定した経営と強固な財務基盤といった特徴を有していると言えるでしょう。
ダイヤモンドZAIが2024年8月に公開した「連続増配株ランキング」を見てみると、その特徴がイメージできるはずです。
順位 |
企業名 |
連続増配年数 |
予想配当利回り |
1位 |
花王 | 34年 |
2.32% |
2位 |
SPK | 26年 |
2.72% |
3位 |
三菱HCキャピタル | 25年 |
3.82% |
4位 |
小林製薬 | 24年 |
1.74% |
5位 |
ユー・エス・エス | 24年 |
3.01% |
5位 |
リコーリース | 24年 |
3.16% |
7位 |
トランコム | 23年 |
2.24% |
8位 |
ユニ・チャーム | 22年 |
0.91% |
9位 |
リンナイ | 22年 |
2.20% |
9位 |
KDDI | 22年 |
3.30% |
9位 |
沖縄セルラー電話 | 22年 |
3.01% |
9位 |
サンドラッグ | 22年 |
3.17% |
出典:ダイヤモンドZAI
20年以上連続増配をしている企業を見ると、誰もが知っているような大企業が名を連ねていることが分かります。
また、合わせてチェックしておきたいのが、連続増配株はその安定性に加えて配当利回りが高いというポイントです。流石に若い企業のような10%超えの利回りまでは期待できないものの、銘柄次第で3%を超えてくるような利回りを期待することが可能です。
加えて、連続増配株に該当する銘柄の多くは我々の生活に不可欠なサービスを提供していることが多く、不安定な経済情勢の中で今後も成長を続けていくことが期待できるでしょう。
このように、連続増配株に該当する銘柄には、企業としての安定性や成長性といった点で魅力があると言えます。
連続増配株投資のメリット
増配株投資には、大きく分けて二つのメリットが挙げられます。
- 安定した収入源として配当金を受け取り続けられる
- 株価の安定性と高いリターンが期待できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
安定した収入源としての配当金
連続増配株は、株を保有しているだけで受け取ることができる配当金が、毎期増え続けるといった大きなメリットがあります。そのため、連続増配株に投資することにより、安定した収益源を確保できる可能性があると言えます。
仮に先程紹介したような増配株銘柄に20年以上投資していたとしたら、この20年間は何をすることもなく勝手に配当金が振り込まれ続けていたことになります。
また、連続増配をしている企業は、経営観点で株主還元の意識が高いと考えることもでき、多少会社の財務状況が悪化したとしても、株主に投資を続けてもらうために増配を続けるといった判断をするとも考えられます。
もちろん連続増配をしているからといって来期も必ず増配をするとは限りませんが、少なくとも連続増配をしていない企業に比べ、来期も配当金を期待しやすいと考えられるでしょう。
株価の安定性とリターンの期待
連続増配株は、相場が下落した際であっても比較的堅調に株価を維持できているといった傾向にあります。
投資の世界において、どのような歴戦のトレーダーであっても相場を完璧に読むことはできません。不意に株式市場全体が下落するといったことは珍しいことではなく、我々個人投資家はいかにしてリスクを最小限に抑えるかといった観点が重要になってきます。
たとえば2022年以降の米国株式市場において、S&P500配当貴族指数(プライスリターン)とS&P500の指数推移は以下のようになっています。

2022年7月から10月にかけてS&P500は大きく指数を落としていますが、連続増配株であるS&P500配当貴族指数はS&P500ほどの下落をしていません。
加えて、S&P500配当貴族指数は指数の立ち直りも早く、結果として常にS&P500指数よりも高く推移していることが分かります。
このように、連続増配株には長期保有を考える際の株価の安定性が魅力と言えます。
また、安定的に株価が推移することに加えて、先程触れた通り連続増配株は高い成長性も有していることから、将来的に株式を売却する時のリターンの期待もできるでしょう。
リターンの期待について、以下のようなシミュレーションで見てみましょう。
【投資銘柄】
<投資1年目>
<投資30年目> |
個別株を長期保有する場合は、将来のリターンも考えて連続増配株を選ぶのも一つの選択肢になるかもしれません。
連続増配株投資のリスク
連続増配株だからといって、手放しに投資をしていいということではありません。安定して成長が期待できる反面、その裏に孕むリスクはしっかりと認識しておきましょう。
まず、ある程度連続増配を続けている銘柄になってくると、株価の下落や株主離れを防ごうとするあまり、企業が無理して増配を続けるといったリスクが考えられます。
記事冒頭で解説した通り、配当金は企業の利益から支払われていますので、無理して増配を続けることで財務状況を悪化させてしまう可能性があります。
結果的に、不意に減配されて株価が落ち、投資資産が目減りしてしまうといったこともあるでしょう。
また、市場が大きく変動してくると、連続増配銘柄であったとしても企業の将来性にリスクが生じるケースも考えられます。
特に昨今は生成AIによる技術革新が著しく、プロダクト一つでマーケットが大きく変わってしまうこともあります。他にも、サイバー攻撃による事業存続危機や、致命的な不祥事の発覚といったこともあり得るでしょう。
こういった市場の変化は予測が極めて困難なため、連続増配株だからといって安易に集中的な投資をすることは避けておいた方が良いかもしれません。
連続増配株の市場動向
2024年8月現在で言えば、日銀総裁の利上げ発言などを受けて円高が急激に進行したり、日経平均株価が1日で1,000円前後増減することも珍しくなくなってきました。
マクロ的な経済がこれだけ動くということは、個別銘柄の株価も大きく変動する相場であることは言うまでもありません。
加えて、米国や欧州の金利政策も不透明であることから、より個別投資のリスクが高まっている状況とも捉えられます。
このように、リスクが見通しづらい局面においては連続増配株に集中投資するよりも、複数の資産に分散投資することが望ましいとされています。
また、資産の種類としても、株式だけでなく債券や金、不動産などさまざまな対象に投資できておくと、将来の予期せぬ市場動向に対応しやすくなるでしょう。