今さら聞けない関税とは何か?トランプ関税から見た日本の今後【前編】

2025年、アメリカのトランプ大統領が各国に対して強気の貿易関税を課したことが、大きな話題となりました。
いわゆる「トランプ関税」です。
そもそも関税とはどのような制度で、今後の日本にどのような影響を与えていくのでしょうか。
前編では、その前提となる関税の基本的な仕組みと本来の役割について整理します。
関税とは
関税とは、一言でいえば 「外国から輸入される商品にかけられる税金」のことです。
国内で流通している消費税や所得税とは異なり、関税は外国からの商品が国内市場に入る「入り口」で徴収される点が大きな特徴です。
- 課税の主体:輸入国の政府。
- 課税の対象:輸入される商品そのもの。
- 税率の決定:商品ごとに、法律や国際的な取り決めに基づいて設定。(例:自動車には〇%、農産物には〇%など)
また関税率は、「どの国から来たか(原産国)」「商用か個人利用か」などといった複数の条件によって細かく定められています。
関税は誰が払うのか?
「輸入品に課税される」と聞くと輸出企業が払うと思われがちですが、関税を支払うのは原則として輸入者です。
たとえば日本の場合、日本に商品を持ち込む輸入業者や個人が、通関時に税関へ納付します。
そして多くの場合、その関税コストは価格に上乗せされ、最終的に国内の消費者が負担することになります。
【関税コストが消費者に転嫁される仕組み】
- 輸入業者が、通関時に国へ関税を支払う。
- 増えたコストを、販売価格に上乗せする。
- 問屋・小売店を経て、最終的に消費者が支払う。
また、すべての輸入品に必ず関税がかかるわけではなく、一定額以下の少額貨物や特定用途の輸入など条件を満たせば、関税が引き下げられたり、ゼロになることもあります。
関税の3つの役割
関税の役割は、主に次の3つに整理できます。
産業の「保護」
関税の最も代表的な役割が、国内産業の保護です。
安価な外国製品が大量に流入すると、国内企業や農家は価格競争で不利になり、産業そのものが衰退するリスクがあります。
関税は、こうした事態を防ぐための「保護的措置」として機能しています。
関税を課すことで輸入品の価格は上昇し、国内製品との価格差が縮まります。
その結果、国内産業の雇用や技術を維持しやすくなります。
とはいえ日本では農業保護の観点から、農産物には比較的高い関税率を設定する一方、国際競争力の高い工業製品には低い関税率を採用しています。
これは、産業保護と国際貿易促進のバランスを取るための戦略的な設計です。
国の「財源」
徴収された関税は国の一般会計に入り、国家財政の一部を支えます。
歴史的には、所得税や法人税が整備される以前、関税は主要な歳入源でした。
現代ではその比重は低下したものの(約8千億〜1兆円前後で、税収全体の1%程度)、国の財政を支える一部としての役割は残っています。
「交渉カード」
近年、関税は国際交渉における戦略的な武器としての側面を強めています。
- FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)交渉:自国の関税引き下げを提示し、相手国の市場開放を引き出す方法。
- 制裁措置:不公正な貿易慣行や、政治的圧力への対抗手段として高関税を課す方法。
トランプ政権による対中関税は、この交渉カードを使った関税の制裁措置を象徴する事例でした。
自由貿易と関税
国際経済学の理想は、自由貿易です。
関税や貿易障壁を極力撤廃し、各国が最も効率的に生産できる分野に特化すると、世界全体の生産性が高まり、消費者は安価な商品を享受できると考えられています(比較優位の原則)。
しかし、現実には関税はなくなっていません。現実として関税撤廃は、国内産業の衰退や雇用喪失、食料・安全保障リスクを伴うからです。
各国は、自由貿易の恩恵を享受したい一方で、自国の「守るべきもの」を守るため、関税を完全に手放せないジレンマを抱えているのです。
グローバル経済の中での関税の位置づけ
第二次世界大戦後、世界経済は関税引き下げと自由貿易を軸に発展してきました。
- GATT/WTO体制:関税を下げ、国を差別しないルールで貿易を広げる仕組み。
- 関税の役割の変化:主要財源から、産業保護・交渉手段へと比重が移行。
しかし2010年代以降、WTOの機能不全・米中対立・ロシアのウクライナ侵攻などを背景に、「デリスキング(特定の国への過度な経済的依存リスクを減らしつつ、経済関係自体は維持・継続していく戦略)や「経済安全保障」が重視されるようになりました。
その結果、各国は再び関税を保護主義的な政策手段として積極的に活用し始め、自由貿易体制は崩れかかっています。
まとめ
前編では、関税の基本的な仕組みと役割について整理しました。
関税の役割の変化によって世界の均衡が保たれなくなってきています。
後編では、「トランプ関税」をもとに、保護主義的な関税が世界経済や日本に与える影響、そして今後の関税のあり方について掘り下げていきます。