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makeA事務局
2024/09/10 20:24

世界と日本の金融教育:実態の比較

日本における金融教育は、近年ますます注目を集めています。
特に経済的な自立を促進するためには、若い世代から金融リテラシーを向上させることが重要視されていますが、現状は日本の金融教育はまだ発展途上の段階にあります。
世界の金融教育は、日本とどう違うのか探っていきましょう。


 日本の金融教育の実態
 

政府は2005年を「金融教育元年」として、学校での金融教育の推進活動を進めていましたが、多くの場合が家庭や個人の努力に頼ることが多く、体系的な金融教育が不足しているのが実情です。
金融広報中央委員会が2014年に公開した「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」では、金融教育の時間数は、中学1.2年生で「0時間」が5割を超えるという結果になってしまいました。
中学3年生から高校3年生までは「1~5時間」の回答が最も多い一方で、「0時間」の割合も1~3割に及んでいます。
2022年4月に高校でも金融教育が必修化され、家計管理や生活設計の立て方、株式・債券・投資信託といった投資商品の特徴も学べるようになりました。
ですがすでに社会にでた日本人は、投資や資産運用に関する知識を持たずに老後を迎えるリスクが高まっています。
政府や金融機関が提供するセミナーやオンライン講座はありますが、参加者が限定的であることが多く、広く普及しているとは言えないでしょう。


  日本と世界の金融教育格差
 

世界各国を見渡すと、金融教育の充実度には大きな差があります。金融教育が盛んな国についてみてみましょう。

 

1.イギリス
 

金融教育の発祥の国イギリスでは、若い人が少額からでも投資ができるように優遇制度としてISAという制度がつくられました。
現在では成人人口の約50%がISA口座を保有して、自分で資産形成を行うことが当たり前になっています。
 2014年に行われた金融リテラシーの国際調査によれば、イギリス国民の67%が貯蓄・投資・借入について十分な金融リテラシーがあるとされているのに比べ、日本は47%と20%もの差がついています。


 2.フランス
 

「金融と教育」「みんなのための金融スキル」といったプロジェクトがNPO法人を中心に実施されており、若者から高齢者まで各年齢層に対して提供されています。
学校を始め、職場や自宅などあらゆる場所で学ぶ体制が整っていて、近年話題のビットコインに関する内容も盛り込まれるなど、最新の動向をフォローする動きも盛んに行われています。


 3.ドイツ
 

ドイツの学校では2005年から14歳~18歳向けの金融教育プロジェクト「生徒の銀行業」を実施しています。これは、口座設定、信用、将来に対する備えの知識等を学べ、大学入学後の学費・生活費をどうするかなど身近な内容も含まれています。
また2008年には、小学生向けのプロジェクトもスタートしました。


 4.アメリカ
 

アメリカではパーソナルファイナンスという考え方を大切にしており、この考え方を学校教育で自立を促す実践的な教育として、約9割の州で高等学校までの教育段階に組み込まれています。

このように日本では金融教育の必要性が認識されつつあるものの、世界との知識格差が若者の金融リテラシーに大きな影響を及ぼし、将来的な資産形成能力にも差が生じる可能性があります。

 

国別の貯金と投資商品の割合
 

2023年に日本銀行が「資金循環の日米欧比較:家計の金融資産構成」について公開しました。日本では資産のうち貯金・預金の割合が半数を超えているのに比べ、アメリカでは投資商品が半数以上を占めています。

 

 

各国における貯金と投資商品の割合を見ると、金融教育の差が反映されていることが見てとれます。
アメリカやイギリスでは、早い段階から投資や資産運用を始める人が多く、これにより個人の資産形成が進み、老後の安定した生活を支える基盤が築かれています。
正しい金融知識を身につけさまざまな投資商品について理解を深めることで、将来的な資産形成をより効率的に進めることができるでしょう。


まとめ
 

金融教育の重要性が高まる中、日本は他国に比べて遅れを取っている現状があります。
日本でも学校教育の中で金融リテラシーを高めるカリキュラムを整備し、社会人になってからも継続的に学べる環境を整えることが重要です。
政府や民間セクターが協力して教育プログラムを拡充するのを待つのではなく、未来のために個人でも金融知識を身につけて、経済的な自立を目指していきましょう。

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