日本で「富裕層」は増加傾向。これからのライフスタイルの変化とは。

日本における富裕層の割合はどれくらいかご存知でしょうか?
野村総合研究所の調査結果によれば、2023年調査時点で日本の富裕層は149万世帯いることが分かっています。同社が2005年に実施した調査では87万世帯であったため、この20年弱で富裕層世帯が1.7倍に増加しているという事実があります。
今回は、日本の富裕層の増加といったファクトをもとに、富裕層を取り巻く環境やライフスタイルについてご紹介します。
日本における富裕層の増加とその背景
「富裕層」という言葉は、野村総合研究所によれば以下のように定義されています。
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」が1億円以上5億円未満が「富裕層」、5億円以上が「超富裕層」と定義する。
この定義に基づき、富裕層以上と富裕層未満の推移を見てみると、以下のようにまとめられます。
|
富裕層以上 |
2005年 |
86.5 |
2007年 |
90.3 |
2009年 |
84.5 |
2011年 |
81 |
2013年 |
100.7 |
2015年 |
121.7 |
2017年 |
126.7 |
2019年 |
132.7 |
2021年 |
148.5 |
(単位:万世帯)
表を見て分かる通り、富裕層以上の世帯数は調査回ごとに増えてきていることが分かります。
時を経るにつれて富裕層が増えている要因としてはいくつか考えられますが、一つに「特に投資資産は加速度的に資産が増やせること」が挙げられます。
投資の世界では「複利効果」の重要性がしばしば述べられています。
複利効果とは、投資利益をそのまま再度投資資金に充てることによって、利益がさらに利益を生み出し、雪だるま式に資産が増えていくことを言います。
他にも、最近ではYouTuberを始めとした新しい職業の台頭や、副業の流行による収入源の増加など、様々な形で稼ぎを得る人が増えてきていることも理由として挙げられるでしょう。
こうした波に乗れているか乗れていないかによって、富裕層になるかならないかといった、ある種の格差が生まれていると言えます。
日本の格差問題と富裕層の関与
世界諸国に比べると、日本は経済的な格差が少ないというのは皆さんも共感できるのではないでしょうか?
ただ、それは日本をマクロ的な視点で見た時の話であり、各論で見ると実は日本の格差は拡大していると言えます。
所得格差を捉える際に用いられる指標として、「ジニ係数」というものがあります。
この係数は所得が完全に分配されている、つまり格差がなく平等な状況を0とし、偏っている状態を1として見る指標です。
内閣府の公表データによれば、このジニ係数は年々右肩上がりとなっている状況であるとされており、日本の格差が拡大しているということが分かっています。
特に60代後半以降の高齢者層で大きく格差が生じることは昔から提起されていましたが、直近では20代の若年層においても格差が広がってきていることが問題視されてきています。
若年層の貧困化については、ひとり親世帯やフリーター、ニートなど低所得層の割合増加が原因の一つとして捉えられます。また、現在正社員として働く人であっても、生成AIの登場によって職を失い、今後生活に困窮している人が増えてくるかもしれません。
こうした社会格差の是正に対しては、政府が主に対応を進めていきます。
代表的な政策で言えば生活保護制度が挙げられますし、直近の身近な例で言えば住民税非課税世帯に対する給付金の支給なども挙げられます。
また、正社員と非正社員の賃金格差の是正や、ベーシックインカムの導入など格差是正のための議論は日夜行われている状態でもあります。
こうした社会格差に対する政策を進めるためには税金が重要であり、富裕層はその税負担を持って、社会格差の是正に関与しているとも捉えることができます。
富裕層になればなるほど税負担が大きくなるのが一般的ですが、これは所得を再分配し、少しでも社会格差を是正しようとする手段であるのです。ともすれば、社会格差の問題は富裕層が生活していく上で切っても切れない関係にあるとも言えるでしょう。
富裕層にまつわる心理とライフスタイル
富裕層になると購買心理が変わってくると言われています。特に消費行動について、特に以下のようなモノやコトにお金を使う傾向があります。
- 容姿そのものを整えるための自己投資
- 時間を短縮できるサービス
- 資産運用や投資資金
- 子供の教育
- 自身の趣味
特に富裕層は、お金で変えるものは大抵買ってしまっているため、「お金を使ってどういった体験をするか」という観点を重視する傾向が見られます。
一方で、お金があるからといって湯水のようにお金を使う富裕層は少なく、むしろ「モノやサービスの本質的な価値を見極める」ようになります。したがって、見栄を張るためにブランド品を買ったり、投資対効果が低いものには手を出さなくなります。
もちろん、富裕層といっても千差万別のため、贅沢品を購入する人もいます。
ただ、それは何も考えない衝動的な行動ではなく、リセールバリューへの期待やコネクションの構築などの別の背景がある傾向が強いと言われています。
ライフスタイルに目を向けると、富裕層は基本的に働いている場合は1日中仕事詰めになっていることがほとんどです。そのため、1日を最大限に活用するためにも予定を詰め込むような生活をしています。
睡眠時間は短く、移動手段としてタクシーを使って社内で仮眠を取るというケースも珍しくはありません。また、どれだけ忙しくても健康維持のためにジムで身体を動かす習慣を大切にしている富裕層も多くいます。
富裕層になればなるほど自分の1時間の価値を認識していますので、睡眠・仕事・余暇といったスケジュールが、より洗練されたライフスタイルになっていくと考えられます。